超大型台風でキャンパス内ほぼ停電、それでも電気が使えた研究室に学ぶこと

3週間の停電期間、EVから研究室に電力供給(東京都市大学で当時を再現)

二酸化炭素(CO2)排出削減に貢献する設備が防災にも役立っている。2019年に相次いだ自然災害で、電気自動車(EV)の活用やスマートタウンの構築で長期停電を免れた事例が生まれた。国も「気候変動×防災」の方針を打ち出し、平常時はCO2削減、災害時は被害の軽減につながる設備導入を後押しする。

19年10月、観測史上最強クラスの台風19号が襲来し、東日本の広域に被害が出た。東京都市大学世田谷キャンパス(東京都世田谷区)も地下の電気室が浸水し、10月12日に停電が発生した。発電機のおかげで事務棟の電気は復旧できたが、ほとんどの建物は11月4日まで停電した。

【実験役立つ】

この非常事態に太田豊准教授の研究室だけは電気を使えた。建物に横付けしたEVからケーブルを伸ばし、2階の窓から入れて研究室の電気を復旧させた。太田准教授はEVの蓄電池と電力系統の間で電気をやりとりするビークル・トゥ・グリッド(V2G)の研究者。普段の実験が役立ち、EVから研究室へ放電した。

その研究室には太陽光と風力発電を模擬した設備が並び、再生可能エネルギーとEVを大量導入した地域をコンピューター上で検証している。再生エネの発電量の増減に連動してEVの蓄電池を充放電することで、再生エネとEVの普及を両立させる研究だ。

太田准教授は「欧州は再生エネの導入量が増えたため、EVの普及が急がれている」とEVのニーズが高まった背景を解説する。また「日本特有かもしれないが、災害時の電源車としての価値も高まる」と語る。再生エネ普及だけだとEVは高価と感じるが、防災面も考えると社会に受け入れやすくなる。

環境型設備を導入した住宅街「スマートタウン」も、災害時に防災機能を発揮した。19年9月に発生した台風15号で千葉県広域が停電に見舞われたが、県東部の睦沢町の「むつざわスマートウェルネスタウン」はいち早く電気を復旧できた。ガス発電機を起動させ、電力会社とは別に敷設した電線(自営線)から町営住宅などに電力供給した。ガス発電機は日常的にも運転している。天然ガスが燃料なので通常の電気よりもCO2排出が少なく、気候変動対策になっている。

平常時はCO2削減、災害時は非常用電源となる燃料電池(富士通フロンテック)

企業も平時はCO2削減、非常時は防災に活用できる機器を選んでいる。富士通フロンテックは1月末、埼玉県熊谷市の事業所に燃料電池を導入した。普段は電力の半分を燃料電池で賄い、CO2排出量を35%減らす。停電が起きても燃料電池からの電力供給で営業を継続できる。

【対策強化】

環境省は「気候変動×防災」の指針を打ち出し、緊急性が高まった防災対応をテコに気候変動対策を強化する。同省は20年度予算案で、災害時に避難所となる施設への再生エネ設備導入事業に116億円、地域全体で再生エネを大量活用できるインフラ構築事業にも80億円を計上した。

持続可能な開発目標(SDGs)も、気候変動対策を求めたゴール13で「自然災害に対する強靱(きょうじん)性と適応力を強化する」と目標を掲げ、気候変動対策と防災の両立を呼びかけている。

 

2020年3月16日 カテゴリー: 未分類

 


 

 

 

 

 

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