「脱炭素」への長期戦略 再生エネ主力化を着実に
経済産業省の有識者会議が2050年を見据えたエネルギー長期戦略の提言をまとめた。
太陽光、風力などの再生可能エネルギーを「主力電源」と位置づけたのが大きな特徴だ。欧州などに比べ出遅れている再生エネの導入拡大に、積極的な姿勢を打ち出したことは評価したい。
しかし、その実現に向けては多くの課題が残る。「主力」化を絵に描いた餅に終わらせないよう着実な道筋を描く「戦術」も求められる。
長期戦略は、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」を視野に入れ、エネルギー政策の方向性を示すものだ。政府が今夏をめどに改定する「エネルギー基本計画」に反映させる。
究極の目標は「脱炭素化」である。石油、石炭、天然ガスといった化石燃料への依存から脱却することを意味する。
その主役とされたのが再生エネだ。だが、天候に左右される発電量の不安定さ、コストの高さ、送電網への接続問題といった多くの難題を抱えている。改定される基本計画でも、30年度時点での全電源に占める割合が22~24%に据え置かれるのは、その反映と言えるだろう。
長期戦略は、そうした課題克服のために、蓄電池や水素を活用する技術、デジタル技術を駆使した分散型送配電システムなどの開発に力を入れる方針を示した。
既存の技術では先行する欧米や中国に追いつくのは困難と見て、次世代技術の開発に政策資源を集中させるという考えだ。
もっとも、新技術の開発には時間も費用もかかる。政府は、その道筋をより具体的に描く必要がある。「主力電源」に育てるには、不安定さを補完する電源の確保、送電網の効率的運用など既存の技術を生かす官民の知恵も求められる。
一方、気になるのが原発の位置づけだ。長期戦略は「可能な限り低減する」としながら、「脱炭素化」の「選択肢」として存続させることにしている。温暖化対策を原発維持の大義名分にしようというのであれば、理解は得難いだろう。
原発依存からはできるだけ早く脱却する。その前提で再生エネの「主力」化に取り組むべきだ。
2018年4月14日 カテゴリー: 未分類