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2025.11.19
パナソニックとAGC、ガラス型ペロブスカイト太陽電池の開発・実証で連携
パナソニックホールディングス(パナソニックHD/大阪府門真市)は11月14日、グリーンイノベーション基金事業において、AGC(東京都千代田区)と、建材一体型太陽電池(BIPV)の活用に向け、ガラス型ペロブスカイト太陽電池の量産技術開発とフィールド実証に着手すると発表した。公共・商業施設を中心に、耐荷重の小さい屋根やビル壁面への設置など国内外の市場を想定して実証を展開する予定。
量産技術開発とフィールド実証へ
このプロジェクトは、パナソニックHDが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する2025年度グリーンイノベーション基金事業「次世代型太陽電池の開発」のうち、「次世代型太陽電池実証事業」に採択されて実施するもの。
従来は太陽電池の設置が困難だった都市部などへの再エネ導入を加速するため、建物の窓や壁・バルコニーなどにガラス型ペロブスカイト太陽電池を設置する事業の実用化に向け技術開発を進める。
具体的には、安定した品質の大量生産を可能にする量産技術の確立に向け、一連の生産プロセスとして高いスループット・歩留まりを実現する技術を開発。量産技術開発と並行し、同太陽電池の特性を活かした施工方法を含む性能検証のため、建築物など実用環境での施工・運用試験を実施する。事業期間は2025年度~2029年度(最大5年間)。
エンドユーザーのニーズを反映、技術開発・社会実装へ
同事業では、エンドユーザーのニーズを反映した技術開発や社会実装の加速を目的に、太陽電池メーカー単独でなく、ユーザー企業などと連携したコンソーシアムによる提案が求められる。そこで、パナソニックHDを幹事企業としたコンソーシアムを組成し、AGCと、パナソニックグループのパナソニック環境エンジニアリング(大阪府吹田市)が事業における委託・連携パートナーとして参画する。
幹事会社のパナソニックHDは、量産技術の開発に関するモジュール出力、信頼性を含む品質安定化、量産プロセス最適化に加え、フィールド実証を通じた施工・配線・システムの検証に取り組む。AGCは、BIPVの実績や施工、エンジニアリング技術を活かし、構造設計・品質確保を含む施工を支援とともに、実証実験を通じた開発へのフィードバックを行う。
パナソニック環境エンジニアリングは、建築・ガラスと太陽光・蓄電池などのエンジニアリング技術に基づく設計・施工のサポート開発のフィードバックを実施する。
都市部を含めた太陽電池の設置場所の拡大に貢献
パナソニックHDは、BIPVとして、ガラス型ペロブスカイト太陽電池の開発を進めている。
同太陽電池は、極薄の太陽電池の膜を、建築基準に適合した強度・厚みのガラスに塗布し合わせガラス化したもの。その特長として、サイズや透過性、グラフィックパターンの自由度などがある。また、建材一体化することで、さまざまなガラス仕様に対応できる上、耐風圧性能など建築材として求められる基準を満たし、太陽電池としての耐久性が高められる。これにより、建築業界で確立された幅広い施工方法を活用可能となり、都市部を含めた太陽電池の設置場所の拡大にもつながり、建築物と自然に調和する形でオンサイト発電を可能にする新たなソリューションとして、新たな選択肢となることを目指している。
一方、AGCは、太陽光発電セルを2枚のガラスにはさみ込んだBIPVを展開する。3月には東京建物(東京都中央区)と「東京建物八重洲ビル」に、AGC製太陽光発電ガラスの導入したことを公表した。
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2025.11.18
住友化学、リチウム電池用セパレータの国内生産終了へ 韓国子会社に機能集約
住友化学(東京都中央区)は11月13日、国内でのリチウムイオン二次電池用セパレータ事業から撤退し、韓国の子会社SSLM社(韓国大邱市)に製造および関連機能を集約すると発表した。事業再編は2026年3月末をめどに完了する予定。
2006年に生産を開始した住友化学のセパレータ「ペルヴィオ」
住友化学が開発した「ペルヴィオ」は、アラミドの持つ優れた耐熱性と信頼性などの特性を活かしたリチウムイオン二次電池用セパレータで、2006年に愛媛県新居浜市の「大江工場」で量産を開始。近年は、EVやプラグインハイブリッド自動車の販売拡大を受け、大江工場の増強やSSLM社での工場新設など、ペルヴィオの生産能力引き上げを実施してきた。
韓国のSSLM社は、2017年に生産体制の整備が完了。薄膜化や耐久性の改良、生産性向上による競争力強化など、拡大する需要に対応できていることから、今回の再編に至ったという。
国内では今後、柔固体型電池など次世代に向けた革新的材料の研究開発に専念する。この再編により、中長期的に成長が見込まれるEV市場およびリチウムイオン二次電池材料市場における同事業の競争力強化を図っていく。
2022年には、柔固体型電池を開発
住友化学は2022年11月、京都大学・鳥取大学と共同で、柔固体型電池を開発した。
全固体電池は、リチウムイオン二次電池に用いられる電解液を固体にしたもので、容量と充放電時間の長さに特長があるものの、安定した電池動作に課題があった。同社らが開発した柔固体型は、柔軟性を兼ね備えた固体電解質により、圧力を加えなくても電極との界面接合が可能。実証では、無加圧方式で約230Wh/kgの容量を達成している。
住友化学は引き続き、産学共同など専門分野の垣根を超えた研究を継続し、電池材料分野において革新的な技術開発に取り組み、EVの普及をはじめとするスマートモビリティ社会推進への貢献を目指す。
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2025.11.17
住宅太陽光、2040年度に「初期費用ゼロ」市場4倍 ペロブスカイトも伸長
総合マーケティングビジネスの富士経済(東京都中央区)は11月12日、太陽電池関連ビジネスの市場調査結果を公表した。2040年度国内市場では住宅向け太陽光の「初期費用ゼロ」モデルの市場規模が2024年度比4倍の1278億円に達すると予測。次世代太陽光として期待されるペロブスカイトの実用化の期待もあり、建材一体型太陽電池(ガラス基板型BIPV)の市場も倍近くに膨らみそうだ。
東京都の住宅設置義務化が追い風
2025年から東京都などの新築住宅で太陽光発電システムの設置義務化が始まるなど、短期的には太陽光の導入補助で市場がさらに拡大する可能性が高い。長期的にも太陽光発電システムの導入・使用を促す政策により、さらに市場が活性化するとみている。
調査は2025年7~10月、太陽光事業の参入企業や関連企業・団体などへのヒアリング、関連文献調査に富士経済社内データベースを加味して実施した。
初期費用ゼロモデル市場、2040年度に1278億円
住宅向け初期費用ゼロモデル(PPA・リース・割賦)は、初期投資なしで太陽光発電システムを設置し、発電した電気を利用できる住宅向けのサービス。2024年度は300億円程度だった市場規模は、2040年度に1278億円に達するとみられる。
初期費用ゼロモデルは家庭向け電気料金とFITの売電価格が逆転し始めた2010年代後半にサービスの注目度が高まった。地方自治体が太陽光発電システムの設置義務付けや設置推進・補助支援を行ったことも大きな要因という。特に2025年4月からは東京都で住宅太陽光の義務化が始まったことから、初期費用ゼロモデルの採用は今後も増えると予測した。
建材一体型太陽電池、2040年度に1958億円
建材一体型太陽電池については2024年度の市場規模が1000億円程度だが、2040年度には1958億円(2024年度比93.7%増)になる見通しだ。特に薄型・軽量のペロブスカイト太陽電池などの新型・次世代型の需要が高まるとされる。まずは天候の変化に強いガラス基板型の普及が有力とみられ、今回の調査で市場規模が大きく伸びている。
さらに多様な用途が期待できるフィルム基板型ペロブスカイトの市場形成は2030年度以降とみられ、「屋根材や窓ガラスなど、建材の種類によって耐候性や美観性などに最適化された製品への採用が進むと予想される」(富士経済)と分析する。
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2025.11.16
給水給湯管の施工端材を活用した資源循環スキーム構築へ 旭化成ら5社が連携
旭化成(東京都千代田区)、旭化成ホームズ(同)、積水化学工業(同・港区)、積水ハウス(大阪府大阪市)、CFP(広島県福山市)の5社は11月10日、住宅の建築現場で発生する給水給湯管の施工端材を回収・再生し、再び施工する資源循環スキーム構築に向けた取り組みを開始すると明かした。
大手住宅メーカーと化学メーカー、リサイクラーなど業種を超えた5社が協働することで、年々深刻化する資源の枯渇懸念と廃棄物問題に対応するとともに、設計・回収・再資源化のプロセスを構築し、資源を循環させて新たな製品へとつなげるサーキュラーエコノミーの社会実装を目指す。
住戸内で使用される給水・給湯用ポリエチレン管を再生
この取り組みでは、積水化学環境・ライフラインカンパニーが製造する、住戸内で数多く使用されている給水・給湯用の架橋ポリエチレン管「エスロペックス」の廃材のリサイクル技術を検討する。
スキームとしては、まずケミカルリサイクルを手がけるCFPが、エスロペックス廃材を熱分解し再生油を生成する。旭化成は、再生油化した原料から生成した再生エチレンを製造。再生ポリエチレン樹脂を製造原料に、積水ハウスがエスロペックスを生産する。
なお、CFPによる再生油製造から旭化成での再生ポリエチレン樹脂製造までのスキームについては、第三者認証スキームによるクレジットが割り当てられる。
2026年3月末に運用開始予定
旭化成グループ(ヘーベルハウス)、積水化学工業(セキスイハイム)、積水ハウスは現在、エスロペックスを共通で採用している。今回、豊富な住宅供給量をもつ住宅メーカー3社がこの資源循環のサイクルに参画することで、エスロペックス廃材の回収量が拡大、同スキームの経済合理性向上が期待される。
5社は引き続き資源循環スキーム構築を進め、2026年3月末の運用開始を目指す。
素材の再資源化の各役割を担う化学メーカーおよびリサイクラーの強みを融合
旭化成ホームズ・積水化学・積水ハウスの3社は、施工廃棄物の回収やリサイクルなど独自の取り組みを展開してきたが、一社単独の効果を踏まえ、サプライチェーン全体での協働を模索してきた。
旭化成は、素材・化学の知見を活かし、より良い暮らしに貢献するサステナブルソリューションを提供。CFPは、廃プラスチックを油に戻す独自技術を強みとし、ケミカルリサイクルによる資源循環の実現に取り組んでいる。
今後は、素材の再資源化の各役割を担う旭化成と、リサイクラーCFP社の技術とノウハウを融合させることで、環境負荷低減とともに、資源循環の輪を拡げる挑戦を続けていく。
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2025.11.15
オプテージ、新設データセンターに再エネ導入 関西電力PPAで取り組み支援
オプテージ(大阪府大阪市)は11月10日、関西電力(同)およびKDS太陽光合同会社(東京都港区)と、コーポレートPPAに関する契約を締結したと発表した。同契約に基づき、関西電力は、KDS保有の太陽光発電所で発電した再エネ由来の電力を、2026年1月29日に運用を開始する「オプテージ曽根崎データセンター(OC1)」向けに供給する。
CNデータセンター実現に向け、追加性のある再エネ導入
今回の取り組みでは、オフサイトPPAの仕組みを活用する。供給先の新設データセンターは、年間使用電力量の約10%が追加性のある再エネで賄われる見込み。不足分については、関西電力が提供する「再エネECOプラン」を利用し、再エネ100%の電力を実現するという。
オプテージは、総合情報通信事業者として「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」に基づく環境方針を掲げる。今回の取り組みもこの一環で、OC1はカーボンニュートラル型の都市型データセンターとなる予定だ。同社は今後も、CO2排出量の削減に積極的に取り組んでいく。
2025年度中に最大15万kWの電源開発を目指すKDS
PPA実施に伴い、太陽光発電設備の開発と運用を担うKDS太陽光合同会社は、関西電力・大和エナジー・インフラ(東京都千代田区)・SMFLみらいパートナーズ(同)が共同で設立した企業。
同社は、KDSは、太陽光発電設備の開発・維持・管理事業を手がけるエコスタイル(大阪府大阪市)と協業し、2025年度末までに、関西・東京・中部エリアで最大15万kWの電源開発を行う計画を掲げる。
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2025.11.14
JPEA、自然破壊に警鐘 太陽光発電開発のあり方に関するガイド公開
太陽光発電協会(JPEA/東京都港区)は11月11日、太陽光発電の健全な普及を目指し、事業者に向けた開発時の注意点をまとめたガイドを公開した。同指南書は、地域との共生や自然環境への配慮を強調した内容となっている。
生物多様性や地域への配慮が不足した開発事例増加
同協会は、2050年カーボンニュートラル達成に向け、太陽光発電の主力電源化を目指している。同電源開発では、地域との共生を重視し、エネルギーの安定供給や脱炭素化、経済の好循環を促進することが求められるが、近年は、自然環境や生物多様性への配慮が欠けた事例が増加。こうした事態に対する懸念が強まっている。
今回提示したガイドでは、法令遵守の徹底や地域住民との信頼関係構築など事業者による責任ある行動と望ましい取り組みが示されている。
新規開発案件への対応
新規開発では、地域との良好なコミュニケーションを重視し、地域住民の声を尊重する姿勢が不可欠である。そのため、事業者は、環境影響評価を行い、自然環境や生態系への配慮を徹底するよう呼びかけている。また、荒廃農地や耕作放棄地を通じた、地域経済への貢献の重要性も訴えている。
稼働済み案件への取り組み
稼働済みの太陽光発電設備に関しては、地域との共生に問題を抱える案件が存在する。
同協会では「地域共創エネルギー推進委員会」を設立し、既存設備の自主保安や施工不良の是正を進めている。このほか、事業者と地域との共生促進に向けては、優良な事業者の好事例共有などにより、改善策策定や検討を後押しする。
使用済み太陽電池の適正処理
太陽光発電開発では、2030年代半ば以降に耐用年数が約20~30年を迎える太陽光パネルの大量排出が想定されている。廃棄にあたっては、法令遵守とサーキュラーエコノミー推進が必須となる。同協会では、リユースやリサイクルを含む適正処理の実現を目指し、すべてのステークホルダーが関与する持続可能な仕組みの構築に取り組んでいる。
地域との共生・共創の実現に必要な要素
地域共生の実現には、適切な維持管理や再投資が欠かせない。地域のニーズに応じた事業譲渡や集約化を進め、透明で健全な市場環境の構築を図ることや、地域内での収益確保やコスト効率的な事業運営、O&M事業の集約化、蓄電池併設が推奨される。
「呼びかけに終わらず、具体的な実践を促す」
同協会は9月29日に、地域との共生・自然環境配慮を基本とした太陽光発電の健全な普及を目指して 「業界団体としての自主的な行動理念・行動原則 」を公表。太陽光発電開発における事業者の行動規範を示した。
この業界団体としての自主的な行動理念・行動原則がかけ声に終わることなく、具体的な取り組みに結びつけるため、2022年8月に公表した意見表明を改訂。今回「事業者による責任ある行動と望ましい取り組み」として公開した。
同協会は引き続き、関係各者と連携し、社会受容性の向上と確立に向けて取り組みを強化していく。
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2025.11.13
佐川急便ら10者、バッテリー交換式EVとシェアリングの実証 静岡県で
静岡県静岡市、佐川急便(京都府京都市)など10者は11月7日、バッテリー交換式EVの利用およびバッテリーシェアリングの実現に向けた実証実験を開始すると発表した。
実証では、(1)バッテリー充電・交換ステーション」の設置、(2)バッテリー交換式EVの実業務での利用、(3)バッテリーの電源としての利用、(4)バッテリーシェアリングサービスのビジネスモデル検証、の4つの取り組みを行い、再エネの地産地消と地域防災力の強化を図る。
再エネ由来の余剰電力を配送業務などに活用
バッテリー充電・交換ステーションの設置では、太陽光発電から生じる余剰電力をバッテリーへ充電する「バッテリー充電・交換ステーション」を、静岡市内の脱炭素先行地域内恩田原・片山エリアの公園駐車場に設置する。
バッテリー交換式EVの業務の参画者は、佐川急便・ヤマミ(静岡県静岡市)・静岡銀行(同)・静岡大学。各者は、配送事業車両による実業務で利用する。
バッテリー利用では、ヤマト運輸静岡主管支店はEV冷凍冷蔵庫の専用電源として、TOKAIケーブルネットワーク(静岡県沼津市)はシェアサイクルサービス「パルクル」の充電用電源用途で使用する。
バッテリーシェア検証は、静岡ガス運営のバッテリー充電・交換ステーションにてビジネスモデルを検証する。
車両や設備の提供、運用、評価、報告などで協働
実証の参画者は、静岡市、佐川急便、ヤマミ、静岡銀行、静岡ガス、静岡大学、ヤマト運輸、TOKAIケーブルネットワーク、LEALIAN(神奈川県横浜市)、nicomobi(神奈川県厚木市)の10者。
バッテリー関連事業を展開するLEALIANはバッテリー交換式軽バンEV・バッテリーコンテナ・バッテリーワゴンの提供と改良の検討などを、小型EVメーカーのnicomobiは、バッテリー交換式ミニカーEVの提供と改良の検討を行う。静岡ガスは、バッテリーを充電・交換するステーションの設置・運用やバッテリーシェアリングのビジネスモデル検証、実証パートナーの窓口などを担当する。
実証終了後も取り組みは継続予定
実証の成果は、2026年3月開催の「知・地域共創コンテスト」(今回のビジネスモデルは最優秀賞を受賞)にて報告される予定。なお、各者は現在、実証終了後も取り組みを継続する方向で調整中だ。
可搬型バッテリーを軸に再エネ電力ネットワーク構築を目指す新たなビジネモデル
「知・地域共創コンテスト」は、静岡市がスタートアップと地域の共働による新しい社会システムづくりを促進を目的に創設した企画。
静岡ガス、LEALIAN、nicomobiは2024年、「大谷・小鹿地区から始める公民連携で目指すカーボンニュートラル」を提案し、最優秀賞を受賞した。
同提案は、大谷・小鹿地区において、可搬型バッテリーを用いて、再エネ電力ネットワークを構築するというもの。2025年4月以降に数車両によるバッテリーシェアリングの実証を行い、2026年1月以降に事業化する計画となっている。
【参考】
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2025.11.12
出光、宇宙向けソーラーアレイ製品開発促進 米ソースエナジーと協業
出光興産(東京都千代田区)は11月6日、宇宙用ソーラーアレイなどの製造・開発を手がける米スタートアップ企業のSource Energy Company(ソースエナジー)と、戦略的協業を開始したと明かした。出光興産の宇宙用CIGS太陽電池技術とソースエナジー社の先進的な宇宙用ソーラーアレイ技術を組み合わせ、衛星などの宇宙機を対象とした革新的な宇宙用電源ソリューション開発を進める。
大型化を必要としない出光製CIGS太陽電池
ソーラーアレイは、複数のソーラーパネルを組み合わせた、打ち上げ時に収納された構造物が宇宙空間で所定の形状に広がるための機能を備えたシステム。太陽電池全体の構成単位は、セル→モジュールと段階的に大きくなるが、ソーラーアレイはその中でも最大の単位となる。
一般的に、ソーラーアレイは、放射線による劣化を起因とする出力低下を見越し、必要出力よりも大型のサイズで設計される。出光興産が独自開発した宇宙用CIGS太陽電池は、放射線環境下においても高い出力を長期間維持できるため、大型化の必要性がないという。
今回の協業では、出光興産が培ってきた数十年にわたる太陽電池の研究開発・量産の知見と、ソースエナジー社の高い宇宙用ソーラーアレイの開発・供給力を組み合わせ、製品開発に加え、宇宙用太陽電池製品の供給体制強化を図る。
出光興産 イノベーションセンター技術戦略部長 川口 浩司氏は、「協業を通じ、持続可能でレジリエントな宇宙開発に貢献していく」とコメント。ソースエナジー社CEOのフィリップ・ケラー氏は、「出光興産の先進的な宇宙用CIGS太陽電池は、ソースエナジー社の製品ラインアップを拡充し、増加する顧客の需要とニーズに応える技術になる」と評価している。
ソースエナジー社は今後、出光興産の宇宙用CIGS太陽電池技術の実用化に備え、コロラド州ロングモントにある自社設備で同技術に関する開発・試験を出光興産と共同で実施する予定だ。
宇宙での太陽光利用拡大へ カギはGaAs系からの転換
出光興産によると、衛星通信量の増加や地球観測ネットワークの拡大に伴い、宇宙産業の市場規模は世界的に拡大傾向にあるという。特に衛星通信では、携帯端末といった一般機器が利用できる環境整備が進むなど、ビジネス市場が急速に成長している。
宇宙機向けの太陽電池は、過酷な宇宙環境を考慮し、耐性など高い性能が求められる。これまでは、ガリウムヒ素(GaAs)系の太陽電池が主流だったが、世界的な供給不足や衛星需要の急拡大を背景に、現在は代替技術へのニーズが高まっている。
用語解説
CIGSとは、Cu(銅)、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Se(セレン)の頭文字からなる化合物半導体のこと。
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2025.11.11
ダイハツ、EV軽バンを「走る蓄電池」として利用 コンテナ型発電所の実証
ダイハツ工業(大阪府池田市)は12月から、前田建設工業(東京都千代田区)と共同で、複数施設向けマイクログリッドシステムの実証実験を開始する。この取り組みでは、ダイハツが今後導入予定のBEV商用軽バンを『走る蓄電池』として活用するという。
期間は2年間の予定で、茨城県取手市にある前田建設工業のイノベーション実装施設「ICI総合センター」を活用して行う。
平常時に加え、非常時も継続的に利用できるかを検証
両社は今回、「ICI総合センター」の主要施設「ICI-Camp」に、トレーラーで牽引できる20Ftコンテナに、蓄電池と、3ポート(発電・蓄電・使用の3方向接続)電力変換器「SPH」を設置したマイクログリッドシステムを構築した。
実証では、平常時の運用として、日中一時的に電力のピークが高まる厨房と接続し、電力消費の平準化によるCO2の削減効果を検証するとともに、太陽光発電や蓄電池を通じて、体育館に対し継続的に電力供給を行い、災害による停電時を想定した利用の実用性を確認する。
信頼性の確認ができ次第、コンテナを移動させ、太陽光発電との接続による電力供給やBEV商用軽バンを用いた複数建物間での電力融通の検証に移行する計画だ。
エネルギーロス約45%削減が可能
実証で使用する「SPH」は、太陽光発電や蓄電池、BEVなどの直流機器との接続に最適な装置で、交流主体のマイクログリッドに比べて、電力変換回数が大幅に少なく、エネルギーロスを約45%削減できる。
同装置と蓄電池をコンテナに搭載することで、被災地やイベント会場などに移動させることや、太陽光発電との接続により、現地で安定的な電力供給が期待される。
ダイハツと前田建設、2023年に共創を開始
前田建設工業は、「ICI-Camp」施設内の体育館が取手市の避難所に指定されており、停電時の電力供給手段の確保が求められている。また、被災地での復旧活動の円滑化に向け、現地の再エネとの接続が容易に行える移動可能な非常用電源の必要性を感じていたという。
一方、ダイハツは、車両走行時のCO2排出量削減に加え、工場や物流、販売店舗といった生産・非生産分野での脱炭素化が喫緊の課題であり、再エネの有効活用策として、エネルギーの地産地消を促進するマイクログリッドシステムの研究開発を推進。同システムの有効性および信頼性を検証できる実証地の選定を進めていた。
両社は2023年から、共創を開始していたが、今回マイクログリッドシステムによる持続可能なエネルギー供給とBCP対応の実現を目的に、同実証の開始に至った。
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2025.11.10
佐賀・嬉野温泉で自動運転EVバスの公道実証実験 マクニカなど3社
マクニカ(神奈川県横浜市)、福山コンサルタント(福岡県福岡市)、ケー・シー・エス(兵庫県西宮市)の3社は11月5日、佐賀県嬉野市にある嬉野温泉で、最新型の自動運転EVバスを用いた公道実証実験(自動運転レベル2)を実施すると発表した。自動運転の導入が地域にもたらすソーシャルインパクトを検証する。
昼間に毎日11便、金・土の夜間に3便運行
実証は、11月5日~23日に実施。嬉野温泉駅と温泉街を循環するルートで自動運転EVバス(乗客定員9人)を9時台~18時台に計11便運行し、期間中の金・土は夜間便3便も運行する。
自動運転EVバスは計2台で、特定条件下での自動運転機能を付与した自動運転レベル2で走行。遠隔監視は茨城県常陸太田市に新設されたマクニカの遠隔運行管理センターで行う。
嬉野温泉を楽しめるサービス用意
バス車内では、嬉野市のご当地Vtuber「つるふぇった」によるライブ配信(金〜日の午後を予定)を実施し、嬉野温泉の魅力を観光客に発信。嬉野温泉商店街で購入できるお菓子の試食体験、商店街の12店舗で使用可能なクーポン配布など、乗車後にも嬉野温泉を楽しめるサービスを用意する。
マクニカらは2023年度、佐賀県で初となる自動運転EVバスの公道実証実験を実施。遠隔運行管理システムを活用し、運行上の課題や社会受容性などを調査した。
2024年度は自動運転の社会実装に向け、サービス形態やビジネスモデルを見据えた実証実験を実施。利用者ニーズや夜間運行の必要性、安全対策、収益性などについて検証し、地域との対話や共創を通じた解決策を模索した。
2025年度はこれまでの2カ年の取り組みをさらに発展させ、最新型の自動運転EVバスのソーシャルインパクトを検証。社会実装に向けた取り組みを本格化させる。
この実証はケー・シー・エス、日本工営(東京都千代田区)、福山コンサルタントが嬉野市から受託している「嬉野市未来技術地域実装事業」の一環。「来訪者の移動を支えるモビリティサービス」をテーマにした自動運転車両などの社会実装に取り組んでいる。
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