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2021.01.27
水素100%で発電するエンジン、三菱重工らが安定燃焼の手法を確立
三菱重工エンジン&ターボチャージャ(MHIET)が水素を燃料とするエンジンについて、水素利用率100%で安定燃焼できる条件を見出したと発表。今回の成果を生かし、1MW級水素エンジンの実用化を目指す方針だ。
三菱重工エンジン&ターボチャージャ(MHIET)は2020年1月21日、産業技術総合研究所(産総研)との共同研究において、開発した水素を燃料とするエンジンについて、水素利用率100%で安定燃焼できる条件を見出したと発表した。
MHIETはディーゼルエンジンやガスエンジンを母体とする水素エンジンの開発と実用化に向けた取り組みを進めている。産総研とは2019年度から共同で研究を進めており、今回は改良した単気筒エンジンを、産総研の「福島再生可能エネルギー研究所」(福島県郡山市)に設置し、試験運用を実施した。
福島再生可能エネルギー研究所に設置された水素エンジン 出典:三菱重工
水素は、可燃範囲が広く燃焼速度が大きいという特徴がある。そのため、バックファイアやノッキングとよばれる異常燃焼が発生しやすく、燃料として利用する場合にはその対策が課題になるという。
今回の試験では、現在MHIETが販売している希薄燃焼ガスエンジンGSRシリーズを基本とし、水素の燃焼特性に合わせて、燃料供給方法、着火方法、給気弁閉じ時期、空気過剰率などの見直しを行った。その結果、水素専焼・予混合方式での安定燃焼条件を見出すことに成功したという。
試験では6気筒換算で340kW、16気筒換算で920kWまでの試験運転に成功しており、今後はこの結果をベースに、さらに試験データを積み重ねて取得することで多気筒エンジンの開発を進める。その後、2030年代の水素利用の普及拡大を見据え、1MW級水素エンジンの実用化を目指す方針だ。
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2021.01.26
ヤフーが2023年度までに再エネ100%宣言、ZHDの「RE100」加盟も視野に
ヤフー(Yahoo! JAPAN)が2023年度中までに事業活動で利用する電力を100%再生可能エネルギー由来に切り替えると発表。同社を傘下に置くZホールディングス(ZHD)全体でも早期の「RE100」加盟を目指すなど、グループ全体で脱炭素化への取り組みを加速させるという。
Zホールディングス(ZHD)の中核企業であるヤフー(Yahoo! JAPAN)は2021年1月19日、2023年度中までに事業活動で利用する電力を100%再生可能エネルギー由来に切り替えると発表した。Zホールディングス全体でも早期の「RE100」加盟を目指すなど、グループ全体で脱炭素化への取り組みを加速させるという。
現在、ヤフーが事業活動で利用する電力の95%はデータセンターでの消費が占めている。同社では今後、この大部分を占めるデータセンターで利用している電力について、再生可能エネルギー由来に切り替える。
既に米国ワシントン州に所有しているデータセンターは、既に100%再生可能エネルギー電力への切り替えが完了しているという。残る国内データセンターについては、ソフトバンクグループの電力小売事業者であるSBパワーや、各電力会社から電力調達を行い、再エネ化を図る方針だという。テナントオフィスなどで利用している残り5%の電力については、グリーン電力証書などの購入によってオフセットし、再生可能エネルギー100%の達成を目指す方針だ。
ヤフーの電力消費量の95%はデータセンターが占める 出典:ヤフー
Zホールディングスでも再エネ100%の達成を
Zホールディングスは、ヤフーの他、衣料品通販サイトのZOZOや事務用品などのオンライン販売を手掛けるアスクルを傘下に置く。ホールディングス全体のCO2排出量の95%は電力由来のものになるという。Zホールディングスの2019年度の消費電力量は約2.71億kWhだ。
この消費電力量を傘下の企業別に見ると、その75.4%はヤフーが消費しているそのため、ヤフーが100%再生可能エネルギー由来電力での事業運営を達成できれば、ホールディングス全体のCO2排出量も大きく削減できるという。
Zホールディングスにおける電力利用の割合 出典:ヤフー
Zホールディングスは2021年3月にLINEとの経営統合も控えているが、2021年度中に中長期の環境目標を発表する計画。その中では事業で利用する電力を100%再生可能エネルギー由来とすることを目指す国際イニシアチブ「RE100」や、気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指す「SBT」への加盟も視野に入れるという。
「再生可能エネルギー由来の電力に切り替えることで、当然コストは上がるが、気候変動対策をしない方がリスクになると考えている。そのため、可能ならば日本政府の掲げる2050年のカーボンニュートラル達成より、大きく前倒して実現する必要があると考えた。また、インターネットを通じて社会を便利にすることを目指している当社は、多くのエネルギーを消費する立場にある。気候変動対策も含め、50年、100年先の事業の持続可能性を考え、100%再生可能エネルギー化の目標を掲げた」(ヤフー 執行役員コ ーポレートグループSR推進統括本部長 西田修一氏)
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2021.01.25
太陽光+蓄電池を198万円で、LIXILが住宅向け蓄電池事業を発表
LIXIL(リクシル)が住宅向け蓄電池事業を開始すると発表。同年4月1日から、傘下のLIXIL TEPCO スマートパートナーズ(LTSP)を通し、新築住宅の購入者向けに蓄電池と太陽光発電システムのセット販売プランを展開する。
LIXIL(リクシル)は2021年1月21日、住宅向け蓄電池事業を開始すると発表した。同年4月1日から、傘下のLIXIL TEPCO スマートパートナーズ(LTSP)を通し、新築住宅の購入者向けに蓄電池と太陽光発電システムのセット販売プランを展開する。
LTSPが展開するプランの名称は「建て得でんち」。指定のLIXIL商材を採用したZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様住宅を新築するユーザーに対し、LIXILの新商品「スマート蓄電システム」と太陽光発電システムを、製品および設置工事費を含め税別198万円で提供。蓄電池と太陽光発電を割安で導入できるかわりに、ユーザー側は太陽光発電の余剰電力の売電収入を、10年間LIXILに支払うというプランだ。
建て得でんちで提供する新商品のスマート蓄電システムは、蓄電池メーカーであるスマートソーラー製となっている。容量は11.5kWh(キロワット時)の全負荷タイプで、200V出力のため停電時にも家中のコンセントを利用できる。さらに、災害警報に応じて自動で蓄電を行う機能や、電力消費量や気象条件などをもとに充放電を最適化するシステムも備える。システム保証15年と、洪水などでも補償が受けられる自然災害補償10年が付帯する。
「建て得でんち」で提供する蓄電池 出典:LIXIL
建て得でんちの導入費用198万円は、8kW(キロワット)以上の太陽光発電システムを搭載した場合の価格としている。LIXILの試算によると、環境性能の高い建材・設備を使用することによる省エネ効果や、蓄電池と太陽光発電の活用による光熱費削減効果によって、約15年でシステム導入費用を回収できるという。なお、太陽光発電システムの設置容量が5kW以上8kW未満の場合の導入費用は税別208万円となる。
「建て得でんち」のコストイメージ 出典:LIXIL
提供エリアは東北地方から九州地方までのエリアで、行政が指定する垂直積雪量が75cm以下の地域(山梨県、長野県は80cm以下)となっている。
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2021.01.22
50kW級の小型風力を新開発、ゼファーとリコーらが自家消費向けに
ゼファー、リコージャパン、シルフィードの3社は2021年1月18日、50kW級の風力発電機を新たに開発し、太陽光発電と並ぶ電源として普及させることに共同で取り組むと発表した。
ゼファー、リコージャパン、シルフィードの3社は2021年1月18日、50kW級の風力発電機を新たに開発し、太陽光発電と並ぶ電源として普及させることに共同で取り組むと発表した。
この取り組みは、環境省が実施する「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」に採択されたプロジェクト。昨今、地域の防災対策や自営線・既存配電網を活用した独立系グリッドを構築する動きに加え、企業が自社の事業所内で太陽光発電などを自家消費する動きが広がっている。3社はこうした背景を受け、自家消費用途などを目的とする社会受容性の高い定格出力50kW級の風力発電機の開発に取り組むという。
地産地消型エネルギーシステムのイメージ 出典:リコー
具体的な3社の役割は以下の通り。これまでも小型風力発電機などの開発を手掛けてきたゼファーが、風車の全体設計やフィールド試験などを手掛ける。リコージャパンはAIを活用したメンテナンス支援ツールを開発し、シルフィードは翼の生産を担う計画だ。
3社は2023年4月頃までをめどに新たな風力発電機を開発する方針で、その後、各種の性能や静粛性、経済合理性などを検証するとしている。
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2021.01.21
電力価格高騰で新電力56社が経産省に要望、「想定外利得の還元と情報公開を」
年末年始から続く電力市場価格の高騰を受け、新電力56社が経産省に要望書を提出。電力市場価格を形成している情報のさらなる公開と、高騰期間に一般送配電事業者がインバランスなどで想定外に得た利得を小売電気事業者と国民に還元することの2点を求めている。
年末年始から続く、電力受給の逼迫(ひっぱく)を要因とした電力市場の価格高騰。この状況を受け、新電力56社らは2021年1月18日、共同で梶山弘志経産相に要望書を提出した。
連日の寒波による電力需要の増加に加え、天候不順による太陽光発電の発電量低下や、火力発電用のLNG(液化天然ガス)の在庫不足などが影響し、卸電力市場における近時のスポット市場では、約定価格が200円/kWhを超える日が続出した。
新電力の多くは、自社で電源を持たないケースも多い。そうした中、市場価格高騰の影響で電力調達が行えず、事前に提出している需給計画を達成できない場合、不足分をインバランス料金として支払う必要がある。このインバランス料金は市場価格と連動するため、価格が高騰すれば、新電力の負担も大きくなる仕組みだ。なお、経産省は2021年1月17日の供給分から、インバランス等料単価の上限を200円/kWhとする措置を導入した。
直近の電力卸売市場価格の推移 出典:経済産業省
これらの状況を受け今回56社の新電力では経産省に対し、「市場の需要曲線や供給曲線、燃料在庫状況など市場価格を形成している情報の公開」と、「高騰期間に一般送配電事業者がインバランスなどで想定外に得た利得を小売電気事業者と国民に還元すること」の2点を要望として提出した。
56社による経産省への要望書(クリックで拡大)
1点目の情報公開については、現状、各事業者は全国の電源の運転状況に関係なく、主に前日の約定結果を参考にm確実に約定できる価格で札入れを行っており、これが本来の可変費ベースの供給曲線と、効用ベースでの需要曲線の交点で決まるべき約定結果を歪める結果につながっているとする。各小売電気事業者がより適正な価格で入札行為が実施できる環境を整えるために、市場に関する情報の公開を求めるとした。
2点目については、市場価格と連動するインバランス単価は、市場価格の高騰によって、一般送配電事業者の調整力調達コスト(限界費用)を大きく超えると想定されるとし、今回の市場価格高騰の原因検証・究明を経てたのち、一般送配電事業者が想定外の利得を得ているものと認められる場合は、その利得の還元を求めている。
インバランス単価については、遡及的な見直し、または託送料金の減額などでによる還元を求めるとした。ただし、遡及的に見直す場合、高騰した単価で約定し、供給力確保義務履行を務めた事業者が、インバランスを中心に補給を受けた事業者よりも経済的に不利にならない還元とすることも要望している。
今回の要望に賛同した56社(五十音順)
アスエネ株式会社、株式会社アメニティ電力、アンビット・エナジー・ジャパン合同会社、株式会社イーエムアイ、飯田まちづくり電力株式会社、株式会社いちたかガスワン、岩手電力株式会社、エネックス株式会社、株式会社エネファント、エフビットコミュニケーションズ株式会社、加賀市総合サービス株式会社、香川電力株式会社、格安電力株式会社、葛尾創生電力株式会社、岐阜電力株式会社、グリーナ株式会社、グリーンピープルズパワー株式会社、グローバルソリューションサービス株式会社、株式会社コープでんき東北、株式会社サイサン、自然電力株式会社、信州電力株式会社、株式会社翠光トップライン、須賀川瓦斯株式会社、株式会社スマートテック、たんたんエナジー株式会社、株式会社地域電力、株式会社地球クラブ、秩父新電力株式会社、株式会社中海テレビ放送、銚子電力株式会社、デジタルグリッド株式会社、株式会社とっとり市民電力、株式会社登米電力、富山電力株式会社、株式会社ナンワエナジー、株式会社能勢・豊能まちづくり、パワーネクスト株式会社、一般社団法人東松島みらいとし機構、株式会社坊っちゃん電力、株式会社マルヰ、宮崎電力株式会社、みんな電力株式会社、株式会社やまがた新電力、UNIVERGY株式会社、四つ葉電力株式会社、株式会社リケン工業 株式会社リミックスポイント、株式会社Looop、ローカルエナジー株式会社、他6社
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2021.01.20
安価で高用量なマグネシウム蓄電池を実現へ、課題の正極材料の開発に道筋
東北大学と名古屋工業大学らの研究グループは2020年1月19日、高性能なマグネシウム蓄電池を実現する新たな正極材料の開発指針を見出すことに成功したと発表した。長年の課題とされていたマグネシウム蓄電池の正極材料の高性能化に大きく貢献する成果だという。
東北大学と名古屋工業大学らの研究グループは2020年1月19日、高性能なマグネシウム蓄電池を実現する新たな正極材料の開発指針を見出すことに成功したと発表した。長年の課題とされていたマグネシウム蓄電池の正極材料の高性能化に大きく貢献する成果だという。
マグネシウム(Mg)は、広く普及しているリチウム(Li)イオン電池で利用されているグラファイトに対し、約6倍の理論容量を持つ。また、Mgは手に入りやすいため、Mg蓄電池は安価で高容量な次世代蓄電池の一つとして期待されている。
すでに一次電池としては実用化されているが、2価のMgイオンを最適に充放電可能な、高性能なサイクル特性を持つ正極材料の開発が難しく、これが充電が可能な二次電池としての性能向上の障壁になっていたという。
研究グループはこれらの課題を解決する新たな正極材料として、高電位・高容量を示すスピネル型酸化物に着目して研究を行ってきたが、サイクル特性が乏しいことが課題だった。これら従来の材料では、イオンの挿入(放電)により岩塩型構造への相転移が容易に生じるため、Mgイオンの拡散の遅い岩塩相が活物質粒子の表面を覆うことで充放電の進行を妨げることや、相境界の局所ひずみによる活物質粒子の破壊などがサイクル劣化の要因として考えられてきたという。
そこで今回研究グループはサイクル劣化を抑制するため、Mgイオンの新たな拡散パスおよび収\納サイトを導入することを目的とし、従来のスピネル型構造の八面体サイトにカチオン(陽イオン)欠損を有する欠陥スピネル型構造に着目。そして、スピネル型構造を安定化する亜鉛(Zn)、高価数の4価でも安定なマンガン(Mn)を用いた、Zn-Mn系欠陥スピネル型酸化物のZnMnO3を利用し、高電位(2~3ボルト級)、高容量(約100mAh/g)を保ちつつ、従来材料を上回る高サイクル特性の実現に成功した。
ZnMnO3の電気化学測定は、Mgイオンの拡散を促進するため、150℃に昇温したイオン液体を用いて実施。カチオン欠損サイトへのMgイオンの挿入が優先される放電範囲では、従来の密な岩塩相を生成する反応ではなく、構造変化の抑制された放電反応(Mgイオンの挿入)が進行することが示唆されたという。
また、このような充放電容量の範囲内(約100mAh/g)でZnMnO3の充放電試験を行うことで、100サイクル超の充放電が100日以上安定して実現することを示しました。充放電時のエネルギー密度(Mg金属負極の重量と理想的な電位を考慮した値)は200~300Wh/kgと見積もられ、これは従来型のLiイオン電池の理論エネルギー密度(370Wh/kg程度)に迫る値だ。
開発した欠陥スピネル型酸化物材料を利用したMg蓄電池正極の特性 出典:東北大学
今回の成果について研究グループは、長年の課題であったMg蓄電池用正極の高性能化に道を拓くものであり、高エネルギー密度のMg蓄電池の実現に向けて加速度的な研究開発の進展が期待されるとしている。現状では作動温度が高く、室温作動に向けては今後の材料設計による性能向上が必要だが、中温作動(100~150℃)の安全・安心な大型蓄電池としての利用も有望としている。
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2021.01.19
太陽光の電力を直流給電で避難所に、NTT・東電らが千葉市で実証へ
NTTアノードエナジー、TNクロス、日本電信電話、東京電力ホールディングスは2021年1月18日、千葉市立白井中学校において、直流による電力供給実証を開始したと発表した。直流給電で太陽光発電などの電力をロスなく活用し、平時のエネルギー利用効率の向上やレジリエンス強化に役立てる狙い。
NTTアノードエナジー、TNクロス、日本電信電話、東京電力ホールディングスは2021年1月18日、千葉市立白井中学校において、直流による電力供給実証を開始したと発表した。直流給電で太陽光発電などの電力をロスなく活用し、平時のエネルギー利用効率の向上やレジリエンス強化に役立てる狙い。
実証では、NTTアノードエナジーが、NTT東日本が所有するビル敷地内の遊休地に太陽光発電設備と蓄電池を設置。さらに、停電時には千葉市が避難所に指定している白井中学校に地足、自営線による直流供給を行える仕組みを構築する。企業・自治体などによる、敷地外の第三者施設への自営線を活用した直流供給は、国内初の取り組みになるという。
実証システムのイメージ 出典:NTTアノードエナジー
設置する太陽光発電の出力は59kW、蓄電池の容量は36kWh。直流給電用のケーブルは大部分を地中に埋設する仕組みだ。実証ではこのシステムについて、電力品質や、発電設備やシステムの保護に必要な雷害・ノイズ対策などの技術検証を進める。さらに災害時に通信ビルと避難所の間の電力融通が可能となるシステム構成や運用方法についても検討を進めるとしている。
4社は2020年4月から千葉市において、スマートエネルギーシティの実現に向けた共同実証を進めており、今回の実証もその一環となる。千葉市では防災モデル都市実現に向け、学校などの避難所における電源バックアップ整備の支援を進めている。2020~2022年度で避難所182カ所へ屋根上太陽光と蓄電池を導入する計画で、この事業はNTTと東京電力ホールディングスの共同出資会社であるTNクロスが受託している。
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2021.01.18
経産省が新電力に救済措置、市場価格高騰でインバランス上限を200円/kWhに
資源エネルギー庁は卸電力市場価格が高騰していることを踏まえ、インバランス等料金単価の上限を200円/kWhとする措置を発表。当面のインバランス料金に上限を設ける、新電力への救済措置だ。
経済産業省 資源エネルギー庁は2021年1月15日、卸電力市場価格が高騰していることを受け、インバランス等料金単価の上限を200円/kWhとする措置を1月17日の電力供給分から適用すると発表した。2022年4月からの導入が検討されていた料金単価の上限設定を、前倒しで導入したかたちだ。
連日の寒波による寒さや天候不順などが影響し、全国的に電力需給が逼迫(ひっぱく)する状況が続いている。資源エネルギー庁が13日に開催した有識者会議で提示された資料によると、1月の電力需要は例年より約1割程度増加している状況だという。
電力需給の逼迫は需要の増加だけでなく、太陽光発電の発電量低下や、火力発電用のLNG(液化天然ガス)の在庫不足などによる制約なども影響。これらの要因がかさなったことで、卸電力市場における近時のスポット市場では、最高価格が200円/kWhを超える日が継続している。
こうしたスポット価格の高騰によって、新電力を中心に提供されている市場連動型の料金プランを契約している需要家への影響も懸念されている。既に市場連動型プランを提供している新電力では、契約需要家に対する説明や契約変更などの対応に追われている状況だという。
また、市場価格高騰の影響で電力調達が行えず、新電力が事前に提出している需給計画を達成できない場合、不足分をインバランス料金として支払う必要がある。このインバランス料金は市場価格と連動するため、価格が高騰すれば、新電力の負担も大きくなる。
経済産業省はこうした状況を受け「需要家が、安定的な電力供給サービスを継続的に享受できるようにする観点からは、小売電気事業者が将来の市場価格について、一定の予見性を持ってビジネスを行うことのできる環境が重要であると考えられる」とし、1月17日から6月30日までの間、インバランス等料金単価は200円/kWhとする措置の導入を決めたという。
今回の措置は、電気事業法(昭和39年法律第170号)第18条第2項ただし書の「託送供給等約款により難い特別の事情」に該当するものとしており、手続きは1月15日までに一般送配電事業者が行う。新電力の救済策といえる措置だが、自由化された市場に対する対応として、今後議論を呼びそうだ。
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2021.01.15
アサヒHDが電力不足に協力、自社工場で35万kWhを追加発電
アサヒグループホールディングスは2021年1月12日、寒波に伴う暖房利用の増加による電力不足に協力するため、グループ傘下の3工場で同年1月6~15日のあいだ、自家発電設備の発電量を増やすと発表した。3工場で合計約35万kWhを追加発電する予定だ。
アサヒグループホールディングスは2021年1月12日、寒波に伴う暖房利用の増加による電力不足に協力するため、グループ傘下の3工場で同年1月6~15日のあいだ、自家発電設備の発電量を増やすと発表した。3工場で合計約35万kWhを追加発電する予定。
発電量を増強するのは、アサヒビール茨城工場、アサヒ飲料群馬工場、アサヒグループ食品栃木さくら工場の3カ所。設置しおているコージェネレーションシステムの稼働率を高め、系統からの最大限電力受電量を低減させるとともに、一部を東京電力パワーグリッドに供給するという。工場の稼働率が少ない余力時間帯にもコージェネレーションシステムを稼働させ、発電量を増やし電力不足に協力するとしている。
アサヒビール茨木工場 出典:アサヒHD
連日の寒波の影響により、2021年1月の電力需要は例年より増加。8日には、西日本を中心に、全国7エリアで最大需要が10年に1度程度と想定される規模を上回った。資源エネルギー庁が13日に開催した有識者会議で提示された資料によると、1月の電力需要は例年より約1割程度増加している状況だという。
東京電力パワーグリッドは自家発電設備を持つ企業に電力の融通を要請しており、アサヒグループはその要請を受け、今回の対応を実施することとした。寒波の状況次第では、電力提供期間の延長も行う予定としている。
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2021.01.14
アサヒHD、3工場の自家発電設備で35万kWhを追加発電 電力不足に協力
アサヒグループ本社ビル
アサヒグループホールディングス(東京都墨田区)は1月12日、寒波に伴う暖房利用の増加による電力不足に協力するため、グループ傘下の3工場において、1月6日から15日まで、自家発電設備の発電量を増やすと発表した。期間中、3工場で約35万kWh(約4万2千戸分の1日の消費電力に相当)を追加発電する予定。
アサヒビール茨城工場、アサヒ飲料群馬工場、アサヒグループ食品栃木さくら工場に設置するコ・ジェネレーションシステムの操業を上げ、発電した電力により最大限電力受電量を低減させるとともに、一部を東京電力パワーグリッド(東京都千代田区)に供給する。工場で商品の製造量が少ない余力時間帯にもコ・ジェネレーションシステムを稼働させ、発電量を増やし電力不足に協力する。
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