15時間の対決!省エネ住宅と築20年住宅はどっちが快適?
2月5日、今日も寒い。筆者こと、ライターのワタナベは、省エネ住宅の快適性をチェックするため、環境省が実施した「COOL CHOICE ZEH体験宿泊事業」に協力しているモデルハウスに1泊することになった。
泊まるのは相羽建設(東京都東村山市)のモデルハウス「つむじ」だ。2015年に建築家の伊礼智氏が設計し、相羽建設が施工した。ZEH基準を満たす断熱性能を持つ建物だ。
前回は宿泊前に、同モデルハウスの性能などについて話を聞いた(「からくり仕掛けの断熱窓で快適性を生む工夫」を参照)。そして再び、モデルハウスのある東京都東村山市にやって来たというわけだ。
「ZEH」とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、省エネ住宅の一種だ。建物の断熱化や設備の省エネ化で消費するエネルギーを抑えるだけでなく、太陽光発電システムでエネルギーをつくり出す、いわゆる創エネを組み合わせることで、消費エネルギーを年間で差引き正味ゼロにする。
この省エネ住宅で私に課せられたミッションは、(1)室温・外気温を記録する、(2)決められたスケジュールに従い食事や入浴をする、(3)快適性を確認する、という3点。省エネ住宅と築20年の木造住宅を比較するために、この日は、日経 xTECHのYデスクも自宅(築20年の木造住宅)に待機し、こちらと同じように室温を記録することになっている。もちろん、Yデスクも同じタイミングで夕食や入浴をする。
4カ所の温度を測定
温度測定の機器を設置する場所は、リビングと寝室、洗面所、玄関の外の4カ所。省エネ住宅と築20年住宅とも同じ場所に置いて比較することにした。
外気温とリビングの室温については、自動的に温度の変化を記録する機器(データロガー)を用いた。洗面所と寝室には温度・湿度計を置いた。この2カ所については自動的に記録する機能がないので、人力で30分ごとに数値をメモして記録することにした。
Yデスク:すみません、予算の都合で…。文明の利器は2個ずつしか用意できなかったんです。
ワタナベ:そ、そうですか。じゃあ、洗面室と2階の寝室は、手動で計測ガンバリマス!
数日前のそんなやりとりを思い返しながら、午後5時に「つむじ」に到着。日が落ちかけると同時に、すでに冷え込みが襲ってきている。この日は氷点下まで気温が下がる予報だ。
玄関ドアを開けた瞬間、明らかに室内が暖かいことに驚く。前回、下見に訪れたときも「内外で全然温度が違うな」とは思ったが…。あのときと違って、すでに夕闇に包まれて冷え込んできている。しかも、モデルハウスの鍵を渡してくれた、相羽建設のスタッフも既に帰宅した。冬、誰もいない家に帰ってくると、寒々しい空気を感じるものなのに、それがまったくないのだ。
「つむじ」はOMソーラーを搭載している。OMソーラーは、日中、屋根で太陽熱を集熱し、床下にその空気を送り込んで蓄熱する仕組みだ。夕方になっても、日中の熱がしっかりと残っているということなのだろう。「熱が逃げない」というのはこういうことか。
いつまでも玄関で驚いているわけにもいかないので、さっそく室内に入る。温湿度計を設置して、ひと息つくととっぷりと日が暮れた。
外気は3℃でも室内は16℃をキープ
さて、午後6時に1回目の記録。洗面所の室温は15.9℃で湿度が33%。2階の寝室は15.7℃で湿度37%だった。1階と2階とで室温に大きな差がない。筆者の自宅だと、晴れた日は日当たりのいい2階に暖気が集まって、1階のほうが寒いのに。
データロガーを確認すると、外気温は3.2℃で湿度47%。リビングは室温16.6℃で湿度28%だった。まだ暖房を入れていないのに、室内外でこんなに温度差があるとは驚きだ。
温度の記録も終わり、ふと気がついた。16℃なのに「寒くない」のだ。自宅に居る場合、16℃だと確実に暖房のスイッチを入れている。しかし、「つむじ」だと同じ16℃にもかかわらず暖房が無くても気にせず過ごせるのだ。「つむじ」の鍵を受けとる際に、「実は2階のエアコンが壊れていて使えません」と聞いて「ええっ、マジかよ」と思っていたのだが、これならなんとか乗り切れそうだ。
しばらくは30分ごとにせっせと室温と湿度の記録に励む。1階の洗面所と2階の寝室である和室を往復するのは、思ったより面倒で落ち着かないことも分かった。
Yデスクが用意した予定表にしたがって、午後7時に食事、午後9時に入浴を済ませる。キッチンを使ったり、風呂を沸かしたりしたせいだろうか、午後9時にはリビングと洗面所の温度が16.4℃に上がった。外気は2.4℃まで下がっており、暖房は一切使用していないのだが…。
築20年住宅に比べて優越感
ちょっとここで築20年の木造住宅に住むYデスクに電話してみる。
ワタナベ:お疲れ様です! 省エネ住宅、すごいですね。こちらは暖房入れずに過ごせてますよ!
Yデスク:こっちは午後5時半にはリビングの温度が14℃だったので、なんだか寒くて…。我慢できず、ガスファンヒーターを付けましたよ。今、リビングは22℃あります。でも洗面所は11℃と寒い状態です。午後9時に入浴したけれど、湯冷めしそうなので急いでフリースを着込みリビングに逃げ込みました。
ワタナベ:あ、そこはこちらと全然違いますね!
確かに、送ってもらったYデスクの自撮り画像はなんだか寒そうだ。こちらは洗面所もリビングとほぼ同じ室温なので、それほどの肌寒さは感じない。湯上がりもぽかぽかしているので、Yデスクとは逆にフリースを脱いだ状態で過ごしていた。
この解放感はちょっといい。室内に温度差が少ないというのは、こういうメリットもあるのか。
Yデスクに対して思いがけずに優越感を覚えたところで、持ち込んだノートパソコンでここまでのメモをまとめる。1時間ほどしてフリースを着たが、室内に冷え込む感覚はまったくない。
結局、この日は一度も暖房をつけずにすんだ。一晩寝てみて、どこまでこの室温が下がるのだろうか。温度計を見るのが楽しみだ。あ、午後10時台の計測と記録を忘れた…。室内が快適なせいだ、ということでYデスクに言い訳しよう…。
次回は、冷え込みが激しくなる朝の様子を紹介する。かなりの差が出たので、筆者とYデスクは正直驚いてしまった。
2018年3月27日 カテゴリー: 未分類