出光興産、太陽光追尾型ソーラーシェアリング建設 稲作と発電の両立を実証
出光興産(東京都千代田区)は2月28日、国内初となる2MWの規模の次世代営農型太陽光発電所を徳島県小松島市に建設すると発表した。2026年2月の完工を目指す。
この発電所では、太陽光を自動追尾し可動する架台と両面受光型の太陽光パネルを備えた太陽光発電設備を設置することで、農業と再生可能エネルギー発電を両立する。2023年6月に、千葉県木更津市の水田に設置した初号機(45kW)に次ぐ2号機となる。
営農と発電の両立、事業性の確認などを実証
出光興産の次世代営農型太陽光発電システムは、太陽の動きに合わせ自動的に太陽光パネルの向きを調整することにより、耕作期間にはパネル下で栽培する農作物への日射量を最大化し、農作に適した環境を維持する。また、休耕期間にはパネルへの
日射量を最大化し、太陽光パネルの裏面でも発電することで、通年ベースで、日当たりのよい広い土地に設置した「野立て発電設備」と同等の発電量を確保する。
初号機で、収穫した米の収量・品質に問題がないこと、通年ベースで野立て発電設備並みの発電量を問題なく確保できることを確認した。木更津市の初号機で得た知見をベースに、規模の拡大等の検討を重ねた結果、今回の2号機による実証を決定した。2号機では、初号機と遜色ない営農と発電が可能か、事業性の確認などの実証を行う。地元の農業従事者と一緒に、農作物の生育に配慮しながら「農業」と「再エネによる発電」の両立を一層追求する。
なお、太陽光追尾型架台は、パートナー企業であるクリーンエナジージャパン(神奈川県横浜市)が開発した製品を使用している。また、初号機における実証では、水稲研究で実績のある東京農工大学(東京都府中市)と、農地に作付けした水稲について、生育・収穫量の評価と品質向上の可能性に関する共同研究を実施した。
太陽光パネルの設置場所として農地に着目
2025年2月18日に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、2040年度の再生可能エネルギーの比率を4~5割程度にすることが示されている。太陽光発電は主力と位置づけられ、23~29%程度を占める。一方、この計画を達成するためには現状の2~3倍の設置面積が必要だが、大規模な太陽光発電所を設置できる適地は減少している。
この課題に対し出光興産は、太陽光パネルの新たな設置場所として農地に着目、次世代営農型太陽光発電システムによる太陽光発電のさらなる普及拡大に取り組む。この取り組みにより、地域のエネルギー自給率向上と持続可能な営農支援による地域への貢献にも努める。
2024年度「新エネ大賞」を受賞
出光興産は、中期経営計画(2023~2025年度)で、事業ポートフォリオ転換に向けた3つの事業領域として、「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」をあげている。次世代営農型太陽光発電システムの実証は、このうち、サービスステーションを地域の課題を解決する生活の支援基地として進化させる「スマートよろずや」の事業開発と社会実装に向けた取り組みと位置付けている。
この次世代営農型太陽光発電システムは、2024年度「新エネ大賞」の「分散型新エネルギー先進モデル部門」において、「新エネルギー財団会長賞」を受賞している。このシステムでは、高さ3.8mの架台を採用することで、トラクター等の農機具を使える作業空間を確保している。農作に適した環境を維持しながら太陽光発電を行う点が、先進性を有する農業共生型太陽光発電のモデルとして評価されている。
2025年3月12日 カテゴリー: 未分類