東京メトロ、陸上風力の仮想PPAで銀座線を一部再エネ化 鉄道業界初
東京地下鉄(東京メトロ/東京都台東区)は10月15日、国内の鉄道業界で初めて、陸上風力を活用したバーチャルPPAを導入し、銀座線の使用電力の一部を再エネ化すると発表した。この取り組みにより、CO2排出量を年間約8190トン削減する。
岩手・姫神WPから年間2100万kWh
東京メトロは、風力発電事業者のコスモエコパワー(東京都品川区)、小売電気事業者の東京電力エナジーパートナー(東京電力EP/同・中央区)と9月27日付で、非FIT発電設備における発電に係る環境価値の提供に関する契約(陸上風力バーチャルPPA)を締結した。
このPPAの締結により、コスモエコパワーは運営する姫神ウィンドパーク(岩手県盛岡市)から、約15年間にわたり、発電に伴い生み出される年間約2100万kWh分の環境価値を、非化石証書として東京電力EPに提供する。また、発電した電力は日本卸電力取引所に売却する。東京電力EPは、姫神ウィンドパーク由来の非化石証書を、他の発電事業者から調達した電力と組み合わせて東京メトロに提供する。東京メトロは、このスキームを利用することで、銀座線の使用電力を一部実質再エネ化する。
姫神ウィンドパークは2019年4月に運転を開始した。設備能力は18,000kW(2,000kW×9基)。
多様な手段を用いて再エネ活用を推進へ
東京メトロは、長期環境目標「メトロCO2ゼロ チャレンジ 2050」において、グループ全事業が排出するCO2量について、「2030年度-50%(2013年度比)、2050年度実質ゼロ」を目指している。これまでもエネルギー効率に優れた車両や環境負荷の少ない設備などを導入してきた。
10月には、ENEOSリニューアブル・エナジー(ERE/東京都港区)と蓄電池併設型太陽光発電所を活用したバーチャルPPA(VPPA)を締結している。今後も目標達成に向けて、バーチャルPPAをはじめとした多様な手段を用いて再エネの活用をさらに推進していくとしている。
コスモエコパワーは、コスモエネルギーグループの風力発電専門会社で、国内で約130基、設備容量約30万kWの風力発電所の運営を行っている。発電所の立地地点の選定から建設、その後の運転保守までを手がけている。FIT制度からFIP制度への移行が進むなか、今回の取り組みで得られたノウハウは、将来的に参画を目指している洋上風力発電所や陸上風力発電所の開発・運営に活かされ、日本の再エネ主力電源化に貢献できると考えている。
小売電気・ガス事業を手がける東京電力EPは、多彩なメニューの提供を通じて、各種制度への対応や安定的な電源の確保など、再エネの活用における顧客の様々な課題を解決している。
バーチャルPPAとは
コーポレートPPA(電力購入契約)は、需要家が発電事業者から直接再生可能エネルギーを購入する契約形態であり、バーチャルPPAとは、需要家の敷地外に立地する専用発電所で発電された再生可能エネルギーの環境価値のみを需要家が調達する手段をいう。
2022年3月以前に運転開始された再生可能エネルギーの環境価値を対象とするバーチャルPPAの場合は、電力供給を担う小売電気事業者を通じて需要家に供給することが義務付けられている。
風力発電所によるバーチャルPPAの活用では、本田技研工業(ホンダ/東京都港区)が9月、インベナジー・ウインド合同会社(同・千代田区)のグループ会社が運営する風力発電所で発電した電力由来の環境価値を供給するバーチャルPPAを締結したことを発表している。
また、西日本旅客鉄道(JR西日本/大阪府大阪市)は8月、コスモエネルギーグループと、風力発電を活用したバーチャルPPA導入に向けた検討を開始すると発表している。
2024年10月22日 カテゴリー: 未分類