日立、東邦ガスと再エネ由来クリーン水素製造の実証開始 環境省事業に採択
日立製作所(日立/東京都千代田区)は11月18日、東邦ガス(愛知県名古屋市)と、環境省の公募事業に採択され、地域再生可能エネルギーを活用したクリーン水素製造に関するフィジビリティスタディ(FS/実現の可能性を探る調査)を開始したと発表した。
地域資源であるLNG(液化天然ガス)冷熱や太陽光、風力発電などの再エネを融合して水素を低コストで製造し、運搬や貯蔵、使用までの一貫した地域水素サプライチェーンモデルの構築を目指す。
地域水素サプライチェーンモデルの構築へ
このFSでは、クリーンエネルギー由来の水素と地域の事業活動で発生するCO2を用いてe-メタンを製造し、これを既存のインフラを活用し供給する実証コンセプトのもと、水素製造におけるシミュレーションを行う。
今回のFSでは、東邦ガスがすでに実証に取り組んでいる「知多e-メタン製造実証施設」(愛知県知多市)を拡張し活用する構想であり、地域製造業の工場より回収・運搬されたCO2をもとにe-メタンの製造に加え、日立が再エネ由来のクリーン水素製造プロセスの検討を担当する。また、協力自治体として愛知県が参画しており、低炭素水素製造に必要な再エネ電力供給に係る情報提供など、連携体制を構築している。
CO2発生抑制、低コスト化などの課題に対応
東邦ガスでは、e-メタンの社会実装に向け、知多LNG共同基地にて、愛知県知多市と連携し「バイオガス由来のCO2を活用したe-メタン製造実証」を進めている。そこで、日立は東邦ガスとともに、日立のインフラ制御技術を活かした再エネ由来の水素を最適活用するシミュレーションと連携させ、e-メタン製造に必要な水素を地域由来のクリーンなエネルギーを含めて運用する検討を開始した。
そして、地域水素サプライチェーンモデルの実現可能性を検証するため、環境省の公募事業に「地域資源を活用した原料調達(CO2、水素)によるe-メタン製造と既存導管NWによる供給」を共同提案し採択されたことを受けて、FSを開始する。
カーボンニュートラル実現に向け重要なエネルギーとなる水素は、製造過程におけるCO2発生の抑制や低コスト化での実現が課題となる。また、安定的な水素インフラの運用には、地域のさまざまなプレーヤーと連携し、地産地消型の水素製造・供給や、地域間での水素の需給体制を構築することが求められる。
日立は、このFSにおいて東邦ガスと愛知県と連携し、地域で発生したCO2や再エネ電力を有効活用するモデルを構築し、スケールメリットを創出することで、低コストで脱炭素の観点でシステム運用が最適化された水素サプライチェーンの社会実装を目指す。
また、このFSを通じて得られたノウハウをもとに、水素エネルギーマネジメントシステムとメタネーション設備とのシステム連携によって、他の地域にも横展開し、各地域での脱炭素に貢献していく考え。
FSの概要
日立は、脱炭素支援ネットワークである「大みかグリーンネットワーク」活動を推進しており、大みか事業所(茨城県日立市)を実証フィールドに、さまざまな脱炭素実証を行い、そこで得た技術やノウハウを、地域やサプライチェーンへ還元している。この活動における実証プログラムの一つとして、水素エネルギーマネジメントシステムの構築を進めている。
今回のFSで、日立は、制御技術を活かした水素エネルギーマネジメントシステムの実証成果を活用し、太陽光や風力発電といった、地域の再エネや安価な電力を選択的に用いた水素を製造する検証を行う。具体的には、BTB(Back to Back自励式変換器/自身の回路内に蓄えたエネルギーにより、直流と交流の電力変換を行う変換器)を用いて安定的に電力を融通する技術や、最適なシステム構築を可能とする系統解析、水電解装置などの周辺機器とシステム連携を統合的に制御する技術を、FSに適用する。
東邦ガスは、知多LNG共同基地におけるe-メタン製造実証施設をベースに、基地内の冷熱発電と地域再エネのクリーン電力から製造する水素と、地域の工場などで排出されるCO2を回収・運搬して活用するCO2循環モデルについて、各要素の詳細検討とシステム全体としての有効性などを評価する。
これらを組み合わせ、トータルにシステムを構築することで、低コストでクリーンなエネルギーに由来した水素とCO2を循環する、サプライチェーンの構築を目指す。
2024年11月28日 カテゴリー: 未分類