(社説)再生可能エネルギー 「主力化」へ挑戦の時だ 朝日新聞

めざす方向は見えている。そこへどう進むか。これからは工夫と実行の時である。

太陽光や風力などの再生可能エネルギーの「主力化」をめざす――。政府が7月に決めた新たなエネルギー基本計画に、そんな方針が盛り込まれた。

温暖化対策と原発依存からの脱却とを両立させるには、二酸化炭素を出さない再エネの大幅拡大が必須だ。資源に乏しい日本にとって、国産のエネルギー源としての利点も大きい。すでに海外では、技術革新とコストの急低下を追い風に、多くの国がアクセルを踏んでいる。それにならうのは当然と言える。

ただ、新計画は将来の導入目標を据え置くなど、腰が引けた面もある。単なる「かけ声」に終わらせないために、多くの課題をどう解決していくか。内外の知恵を集め、社会全体で挑戦を加速しなければならない。

■導入目標引き上げよ

4年ぶりに改定された今回の計画は「再エネの大量導入と経済的に自立した主力電源化に向け、課題に正面から取り組まなければならない」とうたった。

ただ、「30年度に発電量の22~24%を再エネでまかなう」とする従来目標を変えなかったのは消極的にすぎる。国内ではすでに15%程度まで伸び、目標の前倒し達成が視野に入る。欧州では、ドイツ連立与党が「30年に65%」の目標で合意するなど、もっと高い水準をめざす国が多い。日本も、どこまで増やせるか、可能性を追求しなければならない。

真っ先に取り組むべきは、再エネの締め出しにつながっている送電線網の制約の解消だ。設備を持つ電力大手が「空き容量不足」と説明し、再エネの発電事業者が開発に二の足を踏むケースが目立っている。

実際には、トラブル時に備えて空けてある分など、送電容量に余力があり、経済産業省と電力業界が運用方法の改善を検討している。今ある設備を最大限活用するため、透明で公平なルールづくりが待ったなしだ。

■弱点克服するには

再エネ拡大を安定軌道に乗せるには、二つの弱点の克服がカギを握る。一つは、海外と比べてまだ割高な発電コスト。もう一つは、供給力が天候で変わる不安定さだ。

日本でコストの下がり方が緩やかな要因の一つに、固定価格買い取り制度(FIT)がある。12年に導入され、再エネ普及の原動力となっているが、業界の高コスト体質の温存につながっている面も指摘される。

FITは再エネ事業者に一定の収入を保障する支援策だ。費用は賦課金として電気料金に上乗せされ、国民の負担は年2兆円ほどまで増えている。これを極力抑えるために、制度の見直しが避けられない。

肝要なのは、成長の芽を摘まないよう目を配りつつ、事業者に競争と効率化を促すことだ。入札でより安い価格を提示した事業者から買い取る仕組みの拡大をはじめ、さまざまな工夫が考えられる。

この先、政策誘導の軸をFITによる直接的な補助から、二酸化炭素の排出に課す炭素税排出量取引に移していくことも検討すべきではないか。市場メカニズムの活用は、再エネの自立を早めることにつながる。

一方、風力や太陽光が増えるにつれ、出力変動をどうならすかも大きな課題になる。当面は火力発電に多くを頼らざるを得ないが、二酸化炭素を減らすには他の手段が欠かせない。

具体的には蓄電池や、電気を広域で融通できる送電線網の整備など、いくつもの選択肢がある。技術の進歩や経済性を見極め、効果的なものを組み合わせて使う必要がある。

■官民それぞれに役割

再エネ主力化は、十年単位の取り組みになる。ハードルを乗り越えて進むうえで大切なのは、官民の役割を整理し、幅広い主体が連携することだ。

政府や自治体の大事な仕事は、民間が研究開発や投資を活発に進められる環境の整備だ。FITのような基本制度のほかにも、たとえば、風力発電の海上利用のルールづくり、再エネに適した土地の情報提供など、やるべきことは数多い。

実際の行動で主役となる企業には、商機や社会的な課題を機敏にとらえて動く姿勢が望まれる。海外では再エネがエネルギー関連投資の中核を占め、巨大な成長市場が生まれている。

日本の産業界は出遅れ気味だったが、注目される動きも出てきた。7月に100以上の有力企業や自治体、団体などが、再エネの普及や情報発信で連携する「気候変動イニシアティブ」を結成した。参加企業は、製造業や金融、建設など幅広い。

エネルギーや環境の面で、社会を持続可能な姿に変える試みは、いまや世界的なうねりとなり、新たな発展の機会を生み出している。この機運を行政、企業、消費者などに浸透させ、次の時代に向かう力としたい。

 

2018年8月29日 カテゴリー: 未分類

 


 

 

 

 

 

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