電力も定額使い放題へ 蓄電池社会の到来間近 到来!蓄電池社会(上)

再生可能エネルギーの大量導入や電気自動車(EV)など、大容量蓄電池の量産を強力に後押しする要因がいくつも出そろってきた。それに伴い蓄電池の価格も大幅に下がりつつある。電力が格安で使い放題となる「バッテリーシンギュラリティー(特異点)」が実現するのは時間の問題だ。

■絶好調の定置型蓄電池

家庭向け定置型蓄電池の大手2社の製品例(写真:右はエリーパワー)

家庭向け定置型蓄電池の大手2社の製品例(写真:右はエリーパワー)

家庭向けの容量数k~12kWhの定置型蓄電池市場が絶好調だ。調査会社のシード・プランニングは2016年度に年間3.9万台だった同電池の出荷数が平均年35%増のペースで拡大し、24年には約42万台になるとみる。

実際、シャープは14年7月に、クラウドとの通信機能を備えた定置型蓄電池「クラウド蓄電池」を発売し、「特にここ1~2年、右肩上がりで販売が伸びている。17年度は7000台が売れ、2016年度の1.5倍になった」(シャープ健康・環境システム事業本部エネマネ企画開発統轄部長兼スマートホーム推進部長の五角博純氏)。これはシード・プランニングの予測を上回る勢いだ。家庭向け定置型蓄電池「Smart Star L」を販売する伊藤忠商事も「市場はこれから伸びそう」と手応えを感じている。

定置型蓄電池の国内販売状況と予測(シード・プランニング調べ)

定置型蓄電池の国内販売状況と予測(シード・プランニング調べ)

累計の販売実績で先頭を行くのはニチコン、そしてエリーパワーがそれに続く。ニチコンは累計で約5万台超、エリーパワーは同2万8000台の定置型蓄電池を出荷したとする。

■「2019年問題」が追い風

こうした定置型蓄電池の現時点の主な用途は、災害や停電時の非常用電源、あるいは、安い深夜電力の料金や太陽光発電の余剰電力を夕方に使うといったもの。11年3月の東日本大震災や16年4月の熊本地震といった大地震が相次ぎ、近い将来には南海トラフ大地震などが起こるとの予測がある。利用者の多くは、そうした災害に備えて安心安全を求める人々だった。

ただ、ここへ来て販売が伸びているのは、「太陽光発電の余剰電力を売るのではなく自家消費したいという人が増えている」(シャープ)からだという。加えて、19年末には半ば強制的に自家消費を増やすことを迫られる。「2019年問題」である。

これは、09年11月に開始された太陽光発電の余剰電力買取制度において、定められていた10年の買い取り期間が終了し始めるのが19年で、しかも同制度以前の買い取り制度も同じタイミングで終了するという問題。「FIT(固定価格買取制度)切れ問題」と呼ぶ例もある。19年時点での買い取り終了件数は約56万件。20年以降も毎年20万~30万件の規模で買い取り終了が続く。

買い取り終了対象の太陽光発電パネル利用者は、それまでおよそ毎月1万円超あった売電収入が突然なくなる格好だ。この利用者が採り得る選択肢は、ある定置型蓄電池メーカーによれば「電力会社にタダで電力を提供する」「自力で買い取り事業者を探して契約」「定置型蓄電池を導入して余剰電力をためて宅内で使う」の3択だという。

ただ、タダで提供を選ぶのは心理的に困難。買い取りをすると発表した事業者もまだいない。そこで、定置型蓄電池の導入を選ぶ利用者が多くなる、と多くの定置型蓄電池メーカーが考えている。特にシャープは鼻息が荒い。「19年の買い取り終了56万件のうち、30万件が当社の太陽光発電パネルの利用者。今は最大のビジネスチャンス」(シャープ)だからだ。

■大型蓄電池市場を5要因がけん引

大容量の蓄電池市場は、今後急速に拡大する要因が目白押しだ。具体的には、(1)上述の2019年問題、(2)再生可能エネルギーの大量導入が世界的に進んでおり、電力系統を圧迫している問題、(3)自動車メーカーの多くや中国、欧州といった国・地域が「EVシフト」を鮮明にしている点、(4)再生可能エネルギーの発電コストや蓄電池の価格が急速に低下している点、(5)仮想発電所(VPP)への取り組みが増え、人工知能(AI)技術やブロックチェーン(分散型台帳)技術がそれを後押ししている点、などである。

大容量蓄電池の需要をけん引するポイントと最近の具体的な動き

大容量蓄電池の需要をけん引するポイントと最近の具体的な動き

■再エネだけで需要の2倍も

(2)は例えば、九州電力の現状がまさにそれである。同社の電力系統では2年前の16年5月4日の時点で既に、太陽光発電と風力発電の出力合計が最大4.9GWになり、全電力需要の66%に達した。九州電力は火力発電の出力を大幅に下げ、しかもダムの揚水に電力を使うことで供給が需要を超えるのを防いだ。当時の太陽光発電の設備量は6.08GWだった。

太陽光発電と風力発電だけで系統の電力需要をはるかに超える可能性(図:九州電力)

太陽光発電と風力発電だけで系統の電力需要をはるかに超える可能性(図:九州電力)

現在の同社の電力系統において、太陽光発電は接続済みの分だけで定格出力7.91GW。再生可能エネルギー全体では計11.4GW。接続検討中の分も含めれば同31.8GWとなる。一方、九州電力の電力系統では夏のピーク時でも、15G~16GWの需要しかない。

このため、再生可能エネルギーの発電事業者の多くは九州電力と次のような契約になっている。再生エネルギーの出力が対処可能な範囲を超えると九州電力が判断した場合は、年間で最大30日は出力を系統へ接続しない出力制御をしても補償しなくてよいという内容だ。春または秋にはいつ出力制御が実施されてもおかしくない。

■再エネは既に安い電力

こうした厳しい状況は四国電力北海道電力でも同じ。海外では、ドイツやスペイン、英国など欧州の多くの国・地域で同様な課題を抱えている。それでも、再生可能エネルギーの系統への導入は鈍る気配がない。

世界の太陽光発電と風力発電の電力市場価格の推移

世界の太陽光発電と風力発電の電力市場価格の推移

世界の多くの国・地域では、再生可能エネルギーの発電コストが石炭火力と同程度、あるいはより低い水準に下がってきているからだ。日照条件が良いサウジアラビアでは17年10月、300MW規模のメガソーラー(大規模太陽光発電所)の発電事業者選定の入札で、1.7857米セント/kWhという超コストでの電力提供を申し出る事業者が登場した例も出てきた。

(日経 xTECH/日経エレクトロニクス 野澤哲生)

 

2018年7月25日 カテゴリー: 未分類

 


 

 

 

 

 

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