太陽光、宴のあと 未稼働560万世帯分失効 再生エネ、遠のく普及 [有料会員限定]

 東日本大震災後に急拡大した太陽光発電が岐路に立っている。高額で売電できる権利を保有するだけで、ビジネスを手掛けない事業者を排除する法改正が4月に施行。合計2800万キロワットの発電計画が失効した。一般家庭の約1割、560万世帯の消費電力分に相当する。宴(うたげ)の終わりと、再生可能エネルギー普及の難しさが改めて浮き彫りになった。

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 太陽光発電会社、エンブルー(東京・千代田)はこのほど群馬県でのメガソーラー(大規模太陽光発電所)建設を断念した。1キロワット時36円という高価格の売電権利を持っていたA社から、土地代合わせて1億円でその権利を買う予定だった。

売電契約結べず
 経緯の詳細は不明だが、実際に家庭へ届ける東京電力ホールディングス系送配電会社とA社はつくった電気を売る契約を結べなかった。A社の売電権利は失効。山間部にあって造成費用などがかかり36円でないと「事業は無理」(エンブルーの三浦洋之社長)という。

 競争の激しい太陽光発電市場では有望スペースは少なくなっている。メガソーラー以外の用途を見いだすのが難しい立地は多く、大量失効発生で土地塩漬けが続出する懸念は拭えない。

 再生可能エネの電気を一定期間決まった価格で電力会社に売れる固定価格買い取り制度(FIT)は2012年に始まった。原子力発電所事故を機にクリーンエネに注目が集まり、中でも太陽光発電は設備設置が比較的容易、当初は40円という買い取り価格――。売電収入は株式や債券と比べて高い利回りが期待でき、申請が膨れ上がった。太陽光バブルだ。

 まず権利だけ取って建設は後回しというケースも続出、副業として参入した企業も多かった。ドイツの2倍超と世界的にも高水準の価格の売電権利を、はなから転売する目的で申請したケースもあった。

 収益性を高めようと発電装置の価格下落をひたすら待つ企業もあった。実際、太陽光パネルは5年で半値近くになり事業環境は悪くないようにみえる。しかし認定案件のうち稼働率は4割。背景の一つに発電以外のコストがかさむ点がある。

 例えば九州など太陽光発電の密集地域では電力会社の送電網につなぐ接続工事費が高騰。建設費2億円のメガソーラーに対して「同額となることも」(太陽光発電事業者)。蓄電池設置を義務付ける地域もある。

 再生エネの受け入れ側の立場も複雑だった。電力会社にとって天候などに左右される電気は、送電線に負荷がかかったり火力発電所を予備電源として確保したりと、需給調整は簡単でない。14年には九州電力などが受け入れを一時保留したこともあったほどだ。

 買い取り費用の一部は国民が電気代と一緒に賦課金として払っている。平均的な家庭で月700円。メガソーラーがどんどん増えると国民負担が増える事情があり、政府が矢面に立つことになりかねない。クリーンエネ普及は各論では様々な思惑が交錯する。

 いびつな現実を前に政府はFIT法を改正。買い取り価格は21円となった。経済産業省は約46万件が失効した可能性があると試算する。稼働中の産業用太陽光発電所と同水準の出力分が失われたことは、メガソーラー新設ラッシュが再び来ないことを示し、太陽光パネルなど関連メーカーに暗い影を落とす。

 京セラは三重県の組み立て工場を今春休止した。昭和シェル石油子会社のソーラーフロンティアは昨年までフル稼働だった国内の生産を3割減らした。パナソニックも昨年2月以降、大阪府内の主力工場の稼働を停止したことで国内外合わせた工場稼働率は現在半分程度にとどまっている。

再編避けられず
 競争環境が厳しくなることで再編は不可避だ。保守ノウハウなどスケールメリットが一段と求められ、事業継続を断念するケースも出てくる。ソフトバンクグループのSBエナジー(東京・港)の藤井宏明副社長は「今後は中古案件の買収も積極的に」と宣言する。

 政府は再生エネの割合を30年度に22~24%へ高める計画。うち太陽光は7%で、今より4千万キロワットの上乗せが必要になる。日本の電力総需要の約3%に相当する2800万キロワットの失効は決して小さくない。現在のエネ事情は引き続き化石燃料に頼る。工場など自家消費を増やしていかないと再生エネ普及は遠のく。

 

2017年5月15日 カテゴリー: 未分類

 


 

 

 

 

 

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