大手電力の弱点を突く「再エネ小売り」

 安価な電気料金で大口需要家を奪還する大手電力の攻勢が激しさを増している。新電力が大手電力に対抗するには、大手がまねしにくいビジネスモデルを築くことだ。再エネは最も有力な手段である。

再生可能エネルギーの導入が進んでいる。では、日本の新電力はどう再エネに向き合っていけば良いのか。

大手電力は現状の電源構成を大きく変えられない。調達電力の多くを自社の火力発電が占める現実にあって、自社の火力を減らしてまでして再エネの調達を大きく増やすのは難しいからだ。

新電力はこの大手電力の“弱み”を突いて、再エネ100%を実現し、需要家にアピールすべきだろう。それが、厳しい競争の中で将来にわたって生き残っていく道の1つである。

新電力も7割以上が火力

再エネの国際的な専門機関である「21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク」(REN21)は、年次報告書「自然エネルギー世界白書(GSR)2017」で、世界全体で再エネの導入は2015年比で9%増加したとしている。

下のグラフは世界の再エネ発電量の各国比較である。日本は世界5位につけている。国土が比較的小さいことを考えると、大変に素晴らしい成果と言えよう。2016年度の日本の再エネ電力量は83.19TWh(1TWh=10億kWh)に上る。

このうち、2012年に始まった固定価格買取制度(FIT)導入後に積み上がった再エネ電力量が50TWh程度になる。これは原子力発電がピークだった電力量321.1TWh(2001年)の7分の1程度に相当する。東日本大震災から6年で、原発の発電量の10~15%を再エネが補うに至っている。

再エネ導入で日本は5番目
世界の再エネ導入量ランキング(出所:21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)
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世界的に再エネ導入が進行する中、日本の新電力は再エネをどう扱っているのだろうか。

下のグラフは、電源構成を開示している新電力上位20社の電源構成平均値である(販売電力量2位のF-Power、同7位のオリックスは電源構成不開示のため除外)。新電力の電源構成のうち火力発電が55.9%を占める。18.8%が日本卸電力取引所(JEPX)からの調達だが、JEPXに卸される電源の大半が火力であることを考慮すると、上位新電力の調達電力は7割以上が火力発電といえるだろう。

新電力も電源の7割以上は火力に依存
新電力上位20社の平均電源構成と東電エナジーパートナーの電源構成(出所:著者作成)
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 一方、FITと非FITを合わせた再エネの調達は20%程度に上る。東京電力エナジーパートナー(EP)など大手電力と比較すると、再エネ比率が10ポイント程度大きい。しかし、全体的には火力依存であることに変わりはない。大手電力より多い再エネ調達率を生かすべく、需要家に再エネをアピールする特別メニューを設けている新電力も少ない。

下表は、販売電力上位100社の中で、再エネ利用やCO2削減といった「環境価値」を付加価値としている小売りメニューの一覧だ。100社のうち6社に限られる。

再エネをアピールしているのは6社だけ
新電力上位100社の環境価値メニュー(出所:著者作成)
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しかも、環境価値を訴求しているケースでも、「グリーン電力証書」や「カーボンオフセット認証」「CO2クレジット」といった証書類の購入に頼っている場合が少なくない。つまり、純粋に「我が社の電力は再エネ100%」と言い切れる新電力はほとんどない。

このように、現時点で大部分の新電力は環境価値を需要家に提示することができないままなのだ。もちろん、新電力が再エネに関心がないわけではない。再エネを扱うことは難しく、容易に扱えないと考える新電力が多いためだろう。

新電力が再エネの導入に踏み切れないのは、現行のFIT制度に起因している。FIT制度を利用した発電所から購入した電力は、3つの価値が取り除かれてしまうためだ。

まず、再エネ価値。FIT電源から電力を購入した新電力は、買取総額から回避可能費用を控除した金額を交付金として受け取る。この交付金を受け取ると、再エネ電力と認められなくなってしまうのだ。そのため、需要家に対して「クリーンな電気」「地球に優しい」といった表現を使えない。営業上の大きな制約だ。

次に、CO2排出量削減価値。FIT電源から調達した電力は、制度上、CO2排出の削減を認められない。

最後に価格価値。FITの交付金である回避可能費用は、JEPX価格と連動している。FITの再エネ発電所から調達するのも、JEPXから調達するのも価格として全く変わらない。

FIT電源の再エネ価値は賦課金を負担する国民(需要家)に帰属するルールになっており、交付金を受け取ってFIT電源を調達した新電力には「お得でない電源」なのだ。

海外で増える「再エネ100%」

一方、世界的には「再エネ100%」を訴求するモデルは一般的になっている。欧州、米国、そしてオセアニアなど電力自由化が進む地域では、下表のように再エネ100%を掲げる事業者がいくつもある。ドイツのEnBWのように大手電力会社が再エネをアピールするブランドを持つケースもあれば、ニュージーランドのトラストパワー(Trust Power)のように再エネ100%で国内の小売シェアを5位まで伸ばしている企業もある。

海外には再エネで成長目指す事業者は多い
再エネを“売り”にしている世界の事業者(出所:著者作成)
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 英エコトリシティ(Ecotricity)は、英国で2002年に始まった小売り全面自由化を機に「再エネ100%」を武器に参入し、ビッグ6(英国の大手電力会社)による寡占時代を生き抜いた電力ベンチャーである。これは、同社の事業姿勢に賛意を示した英国国民が少なくないことを物語る。

英国では、ビッグ6に迫る顧客を獲得した再エネ系新興企業としてグッドエナジー(Good Energy)もよく知られている。同社は再エネ100%を掲げ、メガソーラー発電所やウィンドファームなど150MW以上の再エネ発電所を運営している。また、再エネ100%であることをアピールするだけでなく、再エネ教育にも意欲的で、各地で勉強会などを催している。

風力51%など再エネだけで電力を供給
英グッドエナジーの電源構成(出所:Good EnergyのHPから著者作成)
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大手が不得手だからチャンスがある

世界では需要家側にも大きな変化が見られる。

2017年7月、「RE100」加盟企業が100社に達した。RE100は企業活動に必要な電力の100%を再エネで賄うとコミットする活動で、メンバーには米国のマイクロソフトやグーグル、コカ・コーラ、フィンランド・イケアなどそうそうたる顔ぶれが並ぶ。今のところ日本企業はリコーや積水ハウス、イオンなど6社だけだが、世界の有力企業がこぞって再エネ利用に傾く中、国内でもこうした動きが広がる可能性は高い。

新電力には、FIT、非FITを問わず再エネ発電所から電力を積極的に調達すること強く推奨する。

確かに、FIT電気には再エネ価値がない。しかし、再エネ発電所を応援している立場は主張できる。これに、新たに立ち上がる非化石価値市場などから再エネ価値を購入し、付加するのだ。そうすれば「再エネ発電所と契約した、再エネ価値のある電気」と需要家に説明できる。

さらに、電源のトレーサビリティー(ひも付け)を実施して、本当にFIT発電所から電力を調達していることを需要家に証明できるようにしておくと万全だろう。電力を調達している発電所の情報をきちんと需要家に伝え、再エネ電力を使用していることを需要家に実感してもらうことに価値がある。

また、再エネ100%を目指すといっても、多くの新電力が個別に各地の再エネ発電所と契約を行うことは現実的ではない。このような場合に、電力の共同購入スキームであるバランシンググループ制度の活用が効力を発揮する。バランシンググループの「代表事業者」となる新電力が、全国各地の再エネ発電所からの電力を取りまとめ、バランシンググループに参加する新電力に卸売りをして分配するのである。

調達から卸まで手がけて再エネ力をアップ
「再エネバランシンググループ」のイメージ(出所:著者作成)
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分配のポイントは、ベース電源となり得るバイオマス発電や地熱発電をやや多めに調達すること。これにより、太陽光や風力の出力が想定を下回る時間帯があっても、再エネ100%を達成できるような電源構成が可能になる。FIT電力は市場連動価格なので、余剰インバランスが出たとしても、市場価格と同じ価格で買い取られるので大きく利益を損なう心配はない。もっとも、調達時にプレミア価格を上乗せして買い取っている場合は、その分は損をしてしまうので注意を要する。

バイオマス発電や地熱発電は太陽光などに比べて調達のハードルは高いかもしれないが、プレミア価格を上乗せして支払うならば新電力にも調達の可能性がある。FIT電力の買取価格はJEPXと連動しているため、JEPXの24時間平均価格を9円/kWh程度と見込むならば、仮に2円上乗せして11円/kWhで買い取ったとしても、ビジネスモデルによっては経済的に大きなデメリットになるとは限らない。

このように、「再エネ連合」と呼べるような再エネ発電所や再エネ志向の新電力をバランシンググループとして組織することで、原子力発電や大型の火力発電を擁する大手電力に挑むのである。

この再エネバランシンググループの代表事業者は、再エネ発電所から電力を調達する新電力として独特の運用能力が求められる。具体的には「再エネ発電量の正確な予測」と「再エネ電力の適切な分配」だ。

前者は、天候などで左右される再エネ発電の不安定さを最小限に抑えることが目的だ。太陽光発電や風力発電といった自然変動電源の発電予測技術が不可欠になる。

後者は、バランシンググループの参加新電力間の不平等を抑えることが趣旨になる。昼間だけしか発電しない太陽光発電や、風況などで変動する風力発電のように、日々調達できる電力量が異なる再エネ発電所の電力も、バランシンググループ参加者の需要に合わせて平等に分配しなくてはならない。

そのため、代表事業者は再エネの発電予測機能が搭載された需給管理システムを備える必要がある。この場合の需給管理システムは比較的高価になることが見込まれる。バランシンググループに参加する新電力にも毎月少しずつ負担してもらうなど、代表事業者の負担を緩和する工夫が必要になるかもしれない。

また、調達した再エネ電力をバランシンググループ参加新電力に公平に分配するよう、参加者ごとの需要調達計画を正しく作成する需給管理能力も必要だ。こちらは、代表事業者がいったんまとめて調達した再エネ電力を、代表事業者自身と他の参加新電力の30分単位の電力需要に対して案分する手法が現実的だろう。バイオマスや地熱など安定的な出力が期待できる再エネを多く調達できれば、案分も容易になる。

再エネ100%は、需要予測と発電予測という、需給管理の基本を忠実に理解している新電力であれば実現できる。再エネの発電予測システムや発電制御機器、蓄電池なども装備できればそれにこしたことはないが、需給管理を助けるためのツールに過ぎないという理解も必要だろう。

市場価格の高騰もヘッジ

FIT発電所も固定価格買取期間の20年が終了すれば、限界費用がほぼゼロ円という(バイオマス発電を除く)、新電力にとって極めて安価で魅力的な電源調達先に生まれ変わる。FIT終了後は再エネ価値も、CO2削減価値も自分たちのものになる。これは大手電力会社にとって大きな脅威だろう。

再エネ100%調達を実現している新電力は、FIT開始から20年後の2032年以降、大手電力を大きく下回る電気料金を提示し、RE100企業にも再エネ価値を堂々とアピールできるだろう。日本の電力原価が大きく変わると言って過言ではない。

その前に家庭向け太陽光は10年間で買取期間が満了する。家庭向けは制度開始が2009年なので、最も早いものは2019年にもFIT切れが出てくる。再エネの大部分を占める事業用(家庭用以外)のFIT終了はまだ先の話だが、本格的な再エネ進出を目指す意味でも、手始めに、家庭用太陽光発電をアグリゲートする(買い集める)ことを推奨したい。

家庭用の場合、家庭での自家消費分を差し引いた余剰電力を買い集めることになる。1kWh当たり、例えば2017年度のJEPX昼間価格の半分である5~6円程度で買い取れれば、日中10時~16時の電力を非常に安価に調達できるようになる。

さらに、安価に買い取った太陽光の余剰電力を蓄電池に貯められれば、JEPX価格が高騰しやすい時間帯に集中的に放電することにより、市場価格の高騰を高い精度でヘッジすることも可能になる。現時点では蓄電池のコストがネックになるが、将来的な低価格化の傾向はハッキリしており、蓄電池の利用は今から視野に入れておくといいだろう。

体力のある大手電力に対抗するには、大手電力と異なる価値提供の手段をしっかり確保することが重要になる。

大手電力がやりたくてもできない、電源構成を柔軟に変えられる力を養えるかどうかが勝負の決め手になってくる。

村谷 敬(むらたに・たかし) 村谷法務行政書士事務所・所長
2008年に行政書士として太陽光・風力発電の建設手続きに関与したのを契機に電力の世界へ。エナリスで需給管理業務を極めた後、エプコにて電力小売事業部長として新電力事業を運営。その後、行政書士事務所を立ち上げ、新電力や自治体新電力へのコンサルティングも手がける。

 

2018年5月8日 カテゴリー: 未分類

 


 

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