世界初「ソーラー電車」太陽光を蓄電池にためて運行

オーストラリアのバイロンベイ鉄道(Byron Bay Railroad)は、太陽光で発電した電力だけで走行する電車の運行を2017年12月16日に開始した。太陽光だけを動力源とする「ソーラー電車」は、世界で初めてという。

豪Byron Bay Railroadが開発した世界初の「ソーラー電車」

バイロンベイ鉄道が拠点とするバイロンベイは東部のニューサウスウェールズ(NSW)州の北端近く、シドニーの北方約770km、クイーンズランド州ブリスベンの南方約170kmに位置する。オーストラリア最東端の町として知られ、海岸でサーフィンなどが楽しめるリゾート地でもある。

NSW州のMurwillumbah~Casino間を運行していた総距離132kmの鉄道がバイロンベイも経由する交通機関として運行されていたが、乗降客数の減少を理由に2004年5月にすべての運行が終了した。

バイロンベイはこの鉄道線路のバイロンベイ付近の3kmの区間を修復、約70年前に製造されたディーゼル車を改造し太陽光だけを動力源とする電車として復活させた。プロジェクトの総費用は、約400万ドル。

改修・改造を行う前の車両(出所:Byron Bay Railroad Company)
改修・改造を終え、線路上に搬入中の「ソーラー電車」(出所:Byron Bay Railroad Company)

車両上に6.5kW、駅舎に30kWのパネル設置

同鉄道は2両編成で乗車定員は100人。各車両の屋根上に合計6.5kWの太陽光パネルを設置し、77kWhのリチウムイオン蓄電池システムを併設した。晴天時であれば、車両の太陽光パネルだけでも4~5回の運行が可能という。

車両の屋根上に太陽光パネルを設置する様子(出所:Byron Bay Railroad Company)

駅舎の屋根上にも30kWの太陽光発電システムを設置し、停車中に充電することで、曇天時や車両の太陽光パネルだけでは不足する電力を補う。

ディーゼル車からソーラー電車への改造では、2基搭載していたディーゼルエンジンの1基だけを取り外し、残りの1基は残している。

これは、車両の重量バランスを取るためと、電気系統が故障した場合のバックアップ用という。ただし、通常の運行では太陽光だけで十分な電力が得られるため、ディーゼルエンジンは使用しない。

補助金など一切なしで「ソーラー電車」実現

ディーゼル車としては時速100km以上での走行も可能だったが、ソーラー電車としての運行では時速25kmと低速の走行に留めるという。走行区間が3kmと短く、バイロンベイを訪れる観光客が乗客の大半となることを想定しているためである。

太陽光パネルを車両の屋根上に設置した鉄道としては、2017年7月にインドでインド鉄道が運行を開始した事例がある。ただし、インド鉄道では太陽光による電力は主に車内の照明や空調などに使用され、駆動用ではなかった。

また、欧州では、風力発電のクレジットなどを購入して、鉄道の走行に必要な電力消費量を相殺することで、「風力で走る電車」としてアピールする例があったが、実際に再エネの「生の電力」だけで運行する事例は、今回が世界初と見られる。

オーストラリアで太陽光発電や蓄電池などの普及活動を行う非営利団体Smart Energy CouncilのJohn Grimes代表は、「バイロンベイ鉄道は、政府の補助金などを一切利用せず、世界初のソーラー電車を実現した。さまざまな苦労を乗り越えて、イノベーションを成し遂げた同社に賛辞を贈りたい。このソーラー電車によって、太陽光発電の可能性が広く認知されることを期待している」と述べている。

(日経BP総研 クリーンテック研究所 大場淳一)

[日経テクノロジーオンライン 2017年12月22日掲載]

 

2017年12月28日 カテゴリー: 未分類

 


 

 

 

 

 

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