「ブロックチェーン」がエネルギー業界にもたらすインパクト

ビジネス界では今、「ブロックチェーン」が注目を集めている。ブロックチェーンとは、「これまで1つの場所で集中的に管理していたものを分散させて管理しよう」という考え方のもとに作られた技術のことを指す。発想の根底にあるのは、ある1つの集中的に力を持った組織やシステムに全てのコントロールを委ねるのではなく、参加する一人一人が相互に信頼し合い、助け合って管理していこうという共助・共同管理の考え方だ。例えば、銀行・証券業界では金融(ファイナンス)とテクノロジーが融合した「フィンテック」が期待されているが、ここにもブロックチェーンの技術が生かされている。

ブロックチェーンがこんなにも注目される理由の1つに、安全面・コスト面での大きなメリットが挙げられる。ブロックチェーンは、日本語で「分散型台帳技術」ともいわれている。つまり、データを分散管理することができる。データは分散管理することで安全性・安定性が高まる。また、大規模で複雑な集中型システムに比べると、構築するための投資コストが少なくて済む。

このブロックチェーンが技術的土台となり生まれた代表的なものに「ビットコイン」などの仮想通貨がある。2016年7月にベトナムの仮想通貨取引所を視察に行く機会に恵まれた。視察訪問するまでは、正直なところ仮想通貨に対しては、半信半疑な気持ちが強かった。しかし、現地取引所の担当者が平然とした顔で「この仮想通貨取引所では、1日150億円の取引がおこなわれています」と話していて驚いた。知らない間に、世界では仮想通貨が一定のポジションをとりつつあることを肌で感じた。日本でも改正資金決済法の改正により、仮想通貨がこれまで以上に一般的になろうとしている。

ビットコインなどの仮想通貨を利用すると、円からドル、ドルからユーロなどに通貨を交換する必要がない。海外送金や海外での商品購入での手間暇や手数料が減らせるメリットがある。また、手持ちの自国通貨を仮想通貨にしておくことで資産防衛の手段になる。「なんだ、そのくらいのメリットか」と思う人も多いだろう。しかしそれは、日本の円が国際的に信用され、安定している通貨だからこその発想である。世界的に自国の通貨が不安定な国はたくさんある。自国の通貨が下落していくハイパーインフレの国にとっては、国境のない仮想通貨の方がはるかに信用できるのだ。例えば2013年に預金封鎖が行われたギリシャでは、自国の通貨への信用が下がったことで、資産を仮想通貨に移す人も大勢いた。つまり、金融の世界では分散管理の明らかなニーズが存在している。

業界を超えて広がるブロックチェーン

ブロックチェーンは、不動産、医療などさまざまな業界でも活用が研究されている。おそらくブロックチェーンが変えるのは金融の世界だけではない。将来的には、権利証書、音楽や芸術の著作など、あらゆる価値の取引はブロックチェーンを使って行うことができるだろう。

今、その波はエネルギーの取引にも押し寄せている。例えば、ヨーロッパや米国では、電気を個人間でやりとりする実証実験が行われている。また、これまで管理が非常に煩雑であった再生可能エネルギーの環境価値の交換(太陽光発電や風力発電の付加価値を交換すること)をする実験も行われている。取引される電力量や環境価値の管理、保持、交換にブロックチェーンを活用されている。

海外ではこのようにエネルギーとブロックチェーンを組み合わせた、新しいビジネスモデルの開発を目指す企業が続々と登場している。例えば米国では、エネルギー、クリーンテック、通貨システムに関する分散型ビジネスモデルの開発やコンサルティングを手掛けるLO3 Energy社というエネルギーベンチャーが誕生している。同社は、ニューヨーク州ブルックリンで、ブロックチェーンを活用して太陽陽光発電を持つ家庭が地域内で自由に電力取引を行えるようサービスの実証を進めている。

LO3 Energy社が進めている「Brooklyn Microgrid」

日本は大手新電力のエナリスが、ブロックチェーン技術を活用した電力取引サービスの商用化に向けた取り組みを進めているところだ(関連記事「ブロックチェーン活用した電力取引、福島で実証が始まる」)。

とはいえ、金融業界とエネルギー業界は事情が異なる。海外送金の手数料が安くなる理由から仮想通貨を利用するのは理解できる。しかし、わざわざエネルギーを遠くの異国に送る必要性は高いとはいえない。また、自国の通貨変動リスクをヘッジするために仮想通貨に一部資産を避難させる理由も分かる。しかし、電気代やガス代が毎日変動しすぎて困っているという話も聞かない。

ブロックチェーンは、本当にエネルギー業界にインパクトをもたらすのか、本当に役に立つシーンはあるのだろうか、ブロックチェーンのおかげでこれまではかなえられなかった私たちのニーズが満たされることはあるのだろうかーーこうした点について、これからのエネルギーの活用方法について想像しながら、考えてみたい。

 

2017年10月13日 カテゴリー: 未分類

 


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